文化の日に考える 
~文化と文明のバランス~

11月3日は、文化の日です。
幼稚園児の子供になぜ休みなのか聞かれ、「文化の日だよ」と答えました。
すると、今度は「文化って何?」、「なぜ11月3日なの?」と質問攻めにあいました。

子供に誠実に向き合うためには、先ず自分の理解が必要ですね。

  • 文化の日とは何か?
  • なぜ11月3日なのか?
  • そもそも『文化』とは何か?

 

目次

文化の日とは? なぜ11月3日?

現在我々が使っている国民の休日は、昭和23年(1948年)に定められた『国民の祝日に関する法律』にそっています。

この法律のなかで文化の日は、以下のように定められています。

第一条 自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。

第二条 「国民の祝日」を次のように定める。(中略)
文化の日 十一月三日 自由と平和を愛し、文化をすすめる。

国民の祝日に関する法律

 

11月3日文化の日は、『自由と平和を愛し、文化をすすめる』と定められています。
1946年11月3日に日本国憲法が公布されたことにもとづく祝日であり、日本国憲法が自由や平和、文化を重視しているから定められたそうです。

現在の祝日に変わる1947年まで、11月3日は『明治節/天長節』という明治天皇の誕生日による祝日となっていました。
現在の祝日を検討するなかで11月3日を『憲法記念日』とする案もあったのですが、天皇と憲法が結びつくことを懸念したGHQの反対により、憲法記念日は日本国憲法の施行日である5月3日となり、11月3日は『文化の日』という名称になりました。

現在我々が運用している祝日にも、GHQに影響されているものが未だ残っているのです。

 

文化とは何を意味するのか?

文化の日の定義である『自由と平和を愛し、文化をすすめる』ためには、文化についての理解が大切でしょう。

それでは『文化』とは、何を意味するのでしょうか?
文化と似た言葉である『文明』と比較しながら、みていきます。

【文化】(ぶん-か)
1 人間の生活様式の全体。人類がみずからの手で築き上げてきた有形・無形の成果の総体。それぞれの民族・地域・社会に固有の文化があり、学習によって伝習されるとともに、相互の交流によって発展してきた。カルチュア。「日本の文化」「東西の文化の交流」
2 1のうち、特に、哲学・芸術・科学・宗教などの精神的活動、およびその所産物質的所産は文明とよび、文化と区別される。

【文明】(ぶん-めい)
人知が進んで世の中が開け、精神的、物質的に生活が豊かになった状態。特に、宗教・道徳・学問・芸術などの精神的な文化に対して、技術・機械の発達や社会制度の整備などによる経済的・物質的文化をさす。

デジタル大辞泉

文明は文化の一部(物質的文化)という捉え方もできますが、文化の本質的な意味を深く考えるために二つの言葉の対比を表にまとめました。

文化と文明の比較

文明は『自分たちの利便性のために借りてきたもの』で、文化は『自分たちで時間をかけて作り上げてきたもの』という印象が強いです。

『文化をすすめる』とは我々日本人の文化とは何なのかを再確認し、現代にまで引き継がれてきた文化の歴史的な背景や当時の人たちの想いに触れることなのではないでしょうか。

それでは日本の文化とは、どのようなものなのでしょうか。

 

日本の文化とは?

日本の文化を構成する一つとして、言語(日本語)は欠かせないでしょう。
昔から日本語は口語で話されていましたが、記録するために漢字を中国から借りてきました。
その後より日本語らしさを表現できるように、片仮名や平仮名が生まれてきました。

また自然の状態を表す言葉や、人の微妙な気持ちを表わす言葉など日本独特の表現も多く、日本語の発展(歴史)を振り返るなかにも、日本文化を感じることが出来ます。
日本語を使った書物(絵本)に触れることも、日本文化に触れることに繋がるでしょう。

 

また日本文化を考えるうえで、岡倉天心は欠かせません。
ブログ『日本のグリーン社会実現に必要なもの ~天心が伝えたかったこと~』では、岡倉天心の茶の本を引用しながら、茶道や芸術から日本文化の特徴について紹介しています。

岡潔さんが訴え続けた『情緒』も、日本文化を形成してきた土台になっていると感じています。
情緒については、ブログ『強化すべき『日本人の特徴』 ~情緒を育てよう~』でも紹介しています。

日本の伝統芸能や工芸、伝統的な遊びも、それらが生まれ引き継がれてきた歴史や人々を思い浮かべながら楽しむことで、文化をすすめることになるでしょう。

 

文明偏重から抜け出すために

日本人は島国という環境にも恵まれ、文化を大切にしてきた民族だと思います。
日本の始まりについては諸説ありますが、初代天皇とされる神武天皇の即位が紀元前660年と日本書紀に書かれていますので、2700年近い歴史を持つ珍しい国家とも言えます。
(2月11日建国記念の日も、神武天皇の即位日ですね)

長い歴史のなかでは外国から伝わってきた文明を、日本人が主体的に取捨選択しながら自分たちの文化に取り入れてきました。

一方で江戸末期から明治期の開国により、国として独立し続けるために物質的な強さ/豊かさの実現が最優先事項とされました。
そのために諸外国の考え方や技術を、盲目的に取り入れてきた傾向もあります。
民主主義や自由主義、立憲主義などの政治思想も、そのなかの一部ではないでしょうか。

 

現代でもグローバル化のなかで、文明偏重は続いているように感じています。
文明とは我々の物質的な豊かさを実現してくれるものですので、非常に魅力的です。
一方で文化は精神的な豊かさ、つまりは心の幸せを実現してくれるものだと思います。

他国の文明を取り入れる際には、その文明が生み出されてきた歴史/背景や人々の想いなどまで理解したうえで、日本の文化と融合できるかを意識することが大切でしょう。
物質的な豊かさに惹かれ盲目的に文明を取り込み続けていると、これまで紡いできた日本文化を破壊することにも繋がってしまいます。

これからの幸せを実現するためには、文化と文明のバランスにも目を向けてみることが大切です。

 

国民の祝日の意義を確認しよう

もともと11月3日は明治節(明治天皇の誕生日)でした。
その後GHQの思惑などもあり、文化の日という名称で現在に至っています。

純粋に文化に触れ親しむ日でも意義があるのですが、そこから一歩進めて日本の歴史を振り返ってみませんか。
歴史と言われると気が重い人は、国民の休日について調べてみるのはどうでしょうか。
祝日には歴史的な意味を持つものも多いからです。

国民の休日 内閣府HPより

4月29日昭和天皇の誕生日も、『みどりの日』を経て『昭和の日』に変更されています。
『激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。』というのは、大切なことだと思います。

 

最初は『文化の日』という名称には違和感を持っていました。
ただ文化を考えるなかで日本の転換期であった明治を振り返り、そこから文化と文明についてもう一度考えて欲しいという想いが込められているのではと思うようになりました。

このように捉えると『文化の日』という名称は、GHQの目をかいくぐる名案だったとも思えてきます。

 

皆さんそれぞれにとって、文化を考える素敵な休日になりますように。