共創のパートナーを育てよう 
~自立を促し、自律性を高める~

過保護やトップダウンのもとで育ってきた主体性の低い人材(子供、社員など)を、どうのようにして自律型人材に変えていくかについて考えます。
子育てに悩まれている方も、部下の指導に悩まれている方にも参考になると思います。

1-③異文化コミュニケーション(立場や世代を超えた対話)や、1-④個と公共(自己中心に陥らない自己本位)、1-⑤教育(成長を支援する人の役割変化)などのテーマが関わっています。
タグに関する説明は、『ウィズ/ポストコロナ時代を自分らしく生きる ~ブログ整理(タグ)の考え方~』を参照ください。

 

成長を支援する人の役割変化

絶対的な価値観にもとづき、答えを教えることが成長を支援する人(親、教師、上司など)の役割でした。
相手の利益のために相手に代わって意思決定をする、『パターナリズム』に陥る傾向もあります。
親や教師が子供に対して過保護になったり、上司が部下に詳細な指示を出しているケースは少なくないでしょう。

一方でこれまでゆっくりと起きていた価値観の変化(パラダイムシフト)が、コロナ禍によって加速しています。
絶対的な価値観が無くなるなかで幸せに生きるためには、自分で考え自己決定できることが大前提となっています。

それではどのようにすれば、自分で考え決めることを促せるのでしょうか。

 

自己決定を促す魔法の言葉がけ

私が共感している教育者の一人に、工藤勇一先生がいます。
以前『自律型組織へ変革するには』というブログでも取り上げた、麹町中学校の元校長です。

工藤先生の教育方針は「子供の自律」であり、自律に向けた色々な取り組みをされているので、子育てや社員の意識改革に関するヒントが溢れています。
そのなかから、子供に自己決定を促す3つの言葉がけを紹介します。

麹町中学では「3つの言葉がけ」と呼んでおり、子どもに何かトラブルが起きたとき、全教員がその対応方法の指針としているものです。(中略)

第1の言葉がけの「どうしたの?」で、子どもの置かれている状態を言語化してもらいます。メタ認知に必要な自分の内面に意識を向ける訓練にもなる言葉であると同時に、子どもが何をしても頭ごなしで叱らない、ことがポイントです。

第2の言葉がけの「どうしたいの?」で、子どもの意志を確認します。自分の置かれた状態を解決するための方法を、頭のなかで考えてもらうためのきっかけづくりです。

第3の言葉がけの「先生にできることはある?」で、問題解決の手助けをします。実際には大人から選択肢を与える形になることが多いですが、どんな支援を受けるのか、もしくはそもそも手助けを受けないのかを判断するのは子どもです。同時に、教員がサポートをする意志を表明することで、子どもも「先生は味方である」と認識するようになり、それがさらなる心理的安全性に寄与します。

自律する子の育て方 工藤勇一、青砥瑞人

麹町中学校では教員が3つの言葉かけを通して、生徒に自己決定を促しているのです。

 

自己決定は主体性を生み出す

教師や親に促されながらも自己決定を積み重ねた子供たちは、周りにある課題を自分事として捉え、自ら考えるようになります。
反対に教師や親が決めてばかりいると、更に自分で考えないようになります。

子供に決めさせず、大人が与え続けていくと、子供は自分がうまくいかないことさえ他人のせいにするようになってしまいます。(中略)
子供の考えたルールが期待外れなものでも「勝手にしなさい」とは言わないことです。「任せる」と「見放す」はまったく別の行為です。それに、もしそのルールで子供が失敗したら、そのときこそチャンスです。なぜ失敗したのか、次はどう工夫すればいいのかを話し合うことは子供にとって大きな学びの機会になるでしょう。

「宿題なし・定期テストなし」勉強しろと言わないのに生徒が勝手に勉強する公立中学校の”魔法の質問”3つ

 

他者との対話を通して自己チューを回避

自分で考えて自己決定ばかりしていると、他人のことを考えない自己中心的な人になってしまうという懸念もあるでしょう。
世界各国が自国中心主義に走り、日本国内でも身勝手な主張で起こされる事件も増えています。
それではどのようにして、自分(個)と他人(公共/社会)のバランスを考慮できるようにすればいいのでしょうか。

自分で考え決めたことを他者と共有し、他者からの意見に耳を傾け、自分の考えを修正し、他者にも共感してもらえる考え(共同主観)を形成していく経験を積む。
このような経験を積みながら、バランスを身に着けていくしかありません。
ブログ『本は人と人をつなぐ~読書で幸せになる4つのステップ~』でも紹介した、4つのステップです

個と公共のバランスを鍛える4つのステップ

自分で考え決定できるようになることは『自立』であり、これは上記ステップの①と②ができるようになることです。
そして他者(公共)とのバランスを保った自分の考えに調整できるようになることが『自律』であり、③と④のステップに該当します。

 

指示待ち社員にも有効

子供に自己決定を促す魔法の言葉かけは、大人にも有効です。
若い部下が自分で考えず指示待ちで困っているという話は、よく耳にします。
だからと言って毎回上司がやることを決めて部下に指示を出していると、『過保護パターン』に陥ってしまいます。

部下は心のなかでは上手く行かないと思っているので、自分で工夫するなど成功に向けて努力することはないでしょう。
その結果多くの場合失敗し、上司への不信感がさらに深まり、信頼関係からは遠のいてしまいます。

まずは3つの言葉がけも活用し、部下が自ら考え決定するサポートが上司である自分の役割であると意識を変えてみてください。
そして自分で考え決められるようになった(自立した)社員同士で交流の機会を作り、自律性を高めるのです。
きっと社員一人一人が仕事に対してやり甲斐や充実感を感じられる、素敵な組織に変わるはずです。

 

上下の関係から共創の関係へ

親や教師、上司だけなく『先生』と呼ばれている職業でも、これまで述べてきた状態に陥りやすいのではないでしょうか。

  • 医師と患者
  • 弁護士と依頼人
  • 政治家/官僚と国民 等

これまでは知識や情報の非対称性などもあり、上下の関係が一般的でした。
最近では誰もが多くの情報にネットを経由してアクセスできるようになり、知識も陳腐化が速まっています。
そのため様々な先生と呼ばれる職業は、知識や答えを教える役割から、共に創る役割への変化が求められていると感じています。

『人の話をよく聞くことが特技』とアピールされていた岸田文雄氏が、第100代内閣総理大臣に就任されました。
また新しい時代を国民とともに創る『新時代共創内閣』と掲げられているので、政治家の役割を変えていく覚悟を持たれているのだと信じたいです。
そして日本という国の共創パートナーである我々国民も、しっかりと自分で考え決められるようにならなければなりません。

また親としては子供が自ら考え決められることを支援しながら、幸せな家庭を共創するパートナーとして捉えないといけないと改めて感じました。