アウェイに飛び込み、凝り固まった常識をほぐそう
~成田悠輔氏のインタビュー~

目次

最近の気になる人

最近はネットだけでなく、テレビでもよく目にするようになった成田悠輔さん。〇と□の形をした眼鏡をかけているので、目にした方は印象に残っているのではないでしょうか。ただ成田さんが気になるのは見た目ではなく、その発言がぐさぐさと本質をついていて共感する点が多いからです。そしてその発言は単なる思い付きや相手を否定して自己の優位性を取ろうというよりも、自分の考えや感覚に基づく素直な反応のように見えます。

また私が素朴に感じている『教育』に関する疑問に対して、データを使って応える研究をされており、その取り組みにも興味を持っています。例えば有名な学校に通った場合と、普通の学校に行った場合、その人に与える影響にどのような違いがあるかを、自治体や政府が持つ個人情報などを分析して一つの結論を出しているのです。もちろん色々な捉え方がありデータ分析が全てではないのですが、教育に対する問題提起にも役立ち、教育問題に取り組むうえで参考になると思っています。

簡単にですが、成田さんのホームページから自己紹介文を一部引用します。

研究者・事業者・執筆者
夜はアメリカでイェール大学助教授
昼は日本で半熟仮想株式会社代表
専門は、データ・アルゴリズム・数学・ポエムを使ったビジネスと公共政策(特に教育)の想像とデザイン(中略)
事業者として、サイバーエージェント, ZOZO, 学研, 茅乃舎, ニューヨーク市, シカゴ市などと共同研究・事業を行う

Yusuke Narita HPより

成田さんは麻布中学・高校、東京大学、東京大学大学院、マサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業されています。高学歴の典型のような人が、なぜ教育に関する疑問にデータを持って応えようとされているのか。高学歴を歩んでこられた成田さんだからこそ、現代の教育への疑問を持たれているのかなとも感じていました。

 

成田さんの個性を生み出す源泉?

そんな個人的に興味を持ち続けていた成田さんですが、最近見たYouTubeでのインタビューのなかで、とても共感した内容があったので引用します。『日曜日の初耳学』という、テレビ番組です。

ぼくたちの中に、すごく間違った向上心があるのではないか。仕事や肩書を手に入れた時に、それを離すまいとする強い心が僕たちのなかにある。そこからどう自由になるか。
これは子供の頃から染みつけられてきたもの。学校に行ってみんなと同じ空間にずっといると、学歴や学校に入ることが重要になって、なんでそこに行っているのかわからなくなっても、少しでも偏差値の高い学校に入ることが重要になる。

それと同じようなことが、ずっと違う形で人生を通じて繰り返されている。そこから自由になるために、自分がいる業界と全然違う世界と関わってみるとか、全然違う世代の人と関わってみるというような経験が大事だと思う。(省略)

全然違うアウェイに飛び込んでいく経験を、子供の頃から人生のなかでどういう風に埋め込んでいくかが今後大事になるのではないか。

『林修も唸った!イェール大学助教授・成田悠輔★経済・教育・・・思い込みを捨て、データを見ると新しい世界が』 から引用

成田さんは麻布中学・高校に在籍されていたのですが、睡眠障害を持たれているのでほとんど学校には行かなかった(行けなかった)。その代わりに学校以外の場で、自分と異なる世代の人たちとの関りを持たれたそうです。そんな成田さんだからこそ、偏差値偏重への違和感や疑問を持たれたのでしょうし、今の個性的な成田さんを形作っているのだろうなとも思いました。

 

子供への親の勝手な期待

子供には色々な経験を自らしてもらいたい、そして勉強に対しても偏差値を目的にするのではなく、学ぶ対象への興味やその先にある自分のやりたいことと少しでも結び付けてやって欲しいと願っています。

私は幸いにも親の支援を得て、中学から大学までの一貫校に通っていました。中学受験の時には、受験しなくても推薦で大学まで行けるという条件で学校を探しました。子供ながらにも大学受験は大変そうという印象が強く、受験は早めに終わらせたいという戦略的な一面もあったようです。幸いなことに中学入学後は偏差値というものを一度も測ることなく、今に至っています。

中学、高校と部活漬けの毎日で、授業も真面目に聞いていなかったように思います。それでも大学進学までをある程度保証してもらえていたので、偏差値や少しでもいい大学へという価値観と離れた子供時代を送ることができ、成田氏が言う間違った向上心を染み込ませずに済んだのかなと思いました。

一方大学は将来のことや学びたいことなどあまり意識せず、そのまま推薦で入学したのでもったいなかったなと、時々感じています。子供達には何かを選ぶ時に、その理由や目的にこだわってほしいなとも思っています。そしてそのこだわりは親や周りが期待するからではなく、自分中心であって欲しい。かなり難しいことですし親の勝手な期待なのですが、押し付けにならないように注意しながら持ち続けたいと思っています。

 

業界の常識、世代の常識に疑問を持とう

成田氏は、大学を卒業してから染み付いた価値観をほぐす方法を紹介されていました。その方法とは、自分と異なる業界や世代の人との交流です。

ある業界にいる人が大事と思っていることが、別の業界の人にとっては『なんだそれ』と感じることがある。また逆も然り。そういう経験をすればするほど、しみこませてしまった凝り固まった価値観を少しキャンセルできる。

『林修も唸った!イェール大学助教授・成田悠輔★経済・教育・・・思い込みを捨て、データを見ると新しい世界が』 から引用

自分の中の常識を疑わないと変わる必要性が生まれません。変革活動などしていると、必ず変化に否定的な人が一定数います。若い人が危機感を持って変革の活動を推進すると、若い世代が勝手に何をやっているんだと否定したり、妨害することさえあります。『自分の若い頃はXXXだった』という常套句を持ち出すケースもよく目にします。

また『うちの業界ではXXXが常識なので、新しいことは無理ですよ』というコメントも、よく耳にします。こういった世代や業界で共有されている常識が、知らず知らずのうちに染みついてしまっているのです。

これまで身に着けてきた自分のなかでの常識や価値観、捉え方に対して疑問を持つことは勇気が必要ですが、これがないと成長は生まれないと思います。我々は変革活動の一環として、社員の皆さんに視野を広げる機会作りを提案しています。他社の取り組みを知る、他業界のことを知る、世代を超えて対話するなど、自分と異なる常識を持つ人たちのことを知ることで、自分たちの常識に疑問を持つきっかけにもなるのです。

 

今まで興味を持っていなかったテーマや世代などに、今日から少し飛び込んでみませんか。昨日までとは違った景色が見えるようになると思います。