現状維持が保守ではない 
~本当に守るモノはあるか? ~

日本人は保守的か?

留学や仕事で海外に長く滞在していた話をすると、『日本人は海外と比べて保守的ですか?』という質問をよく受けます。保守という言葉の使い方に違和感を持ちつつも、『現状維持を好み変化に否定的ということであれば、確かに日本人は保守的な人が多いですね。一方今の自分たち(権利や立場、主張など)を守るということであれば、海外の人の方がより積極的に守る行動をとるので日本人より保守的とも言えますかね』、と返すことが多いです。

保守的という言葉から、現状維持の消極的な印象を持つ人が多いのではないでしょうか。守るべきもののために積極的に行動できる人が、保守だったのではないでしょうか。

 

『保守』という言葉の意味

保守に対する捉え方が色々とありそうだなと思い、保守という言葉を辞書で調べてみました。

ほ‐しゅ【保守】
1 正常な状態を保つこと。「休業時も機械を保守する」「線路の保守点検」
2 旧来の風習・伝統・考え方などを重んじて守っていこうとすること。また、その立場。「保守派」⇔革新。

デジタル大辞泉

日本人や歴史ある企業の文化に対し使われている保守は、上記2の意味合いで使われているように感じました。ただ大切なのは単に変化を嫌い、現状維持を望む消極的な姿勢ではなく、これまで築いてきた伝統や文化を重んじて(大切にして)守るという積極的な姿勢が含まれているという点です。

日本の保守派に位置づけられる政党は自由民主党(自民党)や維新の会、リベラルに位置づけられるのは日本共産党や社民党、立憲民主党などが挙げられます。日本の保守派は現在の日本国憲法を積極的に変えようとしていますので、現状維持が保守ではないということを表しているのではないでしょうか。

つまり自分の信じる考えや価値観、愛するモノを守るために積極的な行動をとることが保守であり、現状維持を望む消極的な姿勢と混合してしまうと本質を見失ってしまいます。

 

日本は保守化している?

日本の保守化をテーマにした記事やコメントを、ネットやテレビなどで目にすることが増えました。自民党など保守政党への投票率が高いことを理由に挙げている人もいるのですが、保守政党へ投票しているから保守というのは、少し違う気がします。

ネットで調べていると、総務省が昭和43年から毎年実施している社会意識に関する世論調査というものがありました。愛国心の程度についても調査しており、興味深いのでその一部を引用します。

問1 「国を愛する」という気持ちについて伺います。あなたは、他の人と比べて、「国を愛する」という気持ちは強い方だと思いますか。それとも、弱い方だと思いますか。

問2 あなたは、今後、国民の間に「国を愛する」という気持ちをもっと育てる必要があると思いますか。それとも、そうは思いませんか。

問3 国民は、「国や社会のことにもっと目を向けるべきだ」という意見と、「個人生活の充実をもっと重視すべきだ」という意見がありますが、あなたのお考えは、このうちどちらの意見に近いですか。

社会意識に関する世論調査(令和2年1月調査) 概略版

愛国心に関する1と2の設問に対しては、ここ数年で下がっているもののそこまで大きな変化は見られません。一方問3の社会志向か個人志向かについては、個人志向の比率が高まっています。それでも社会志向の比率の方が、まだ高いです。

調査の結果は、世代別でも発表されています。

問1 国を愛する気持ちの程度

問2 国を愛する気持ちを育てる必要性

問3 社会志向か個人志向か

社会意識に関する世論調査(令和2年1月調査) 概略版

世代が高くなるにつれ、愛国心が高まっています。最近の若者が保守化しているという声も聞きますが、実際は年齢を重ねながら自国(日本)や社会を見つめ、それらを大切に感じる人が増えているのではないでしょうか。そしてこれは、最近だけのことではないのだと思います。

 

大切なモノを守り保ち続けるには

保守というのは、自分が本当に大切と思う国家や社会、価値観や文化を守っていくことだと思います。そのためには本当に自分が愛するモノ・大切なモノが明らかにならないと、保守にはなれないのです。親や教師、上司や経営者に言われたから大切だと思うのではなく、自分の本心から大切に思えるモノや考え、組織や地域を見つけていくことがその第一歩になるでしょう。

一方で保守が強まりすぎると自分が大切にしている考えや価値観が絶対的なものになり、矛盾する考えや主張を排除する傾向が強まってしまいます。

自分が大切にするモノや考えは明確に持ちながらも絶対視するのではなく、他の考え方も存在することを忘れず、どの様にバランスをとっていくかを考えることが益々大切になっています。二者択一ではなく上手く融合していくことも、大切なモノを守り保つための道ではないでしょうか。