モチベーションは上がったり下がったり!? 
~不安定を前提に環境を整えよう~

  • 最近忙しすぎて疲れがたまり、仕事のモチベーションが上がらない
  • 新しく始まった授業は難しすぎるようで、子供のモチベーションが下がっているようだ
  • 子供の勉強に対するモチベーションを上げるために、親としてどうすればいいか
  • 社員は給与にばかり目が行っており、仕事に対するモチベーションを持って欲しい

大人も子供も仕事や勉強など、継続して取り組むことがたくさんあります。そんな時大切になるのが『モチベーション』ですが、最近その使われ方が気になっています。

今回はモチベーションの意味を整理しながら、どの様にして中長期的に物事に取り組んでいくかについて考えます。

 

目次

あなたが使う『モチベーション』の意味は?

モチベーションの定義を調べてみると、以下のように出てきました。

モチベーション(motivation):
1 動機を与えること。動機づけ。
2 物事を行うにあたっての、意欲・やる気。または、動因・刺激。

デジタル大辞泉 より

意欲・やる気、動機付けと、複数の意味があるようです。モチベーションに含まれている意味を私なりに整理したものが、下図になります。

モチベーションに含まれる意味

同じモチベーションという言葉を使っていても、どの意味合いで使っているかで随分と変わります。冒頭の例文を言い換えると以下になり、対応も随分と異なるでしょう。

  • 最近忙しすぎて疲れがたまり、仕事の気分が上がらない
  • 新しく始まった授業は難しすぎるようで、子供のやる気が下がっているようだ
  • 子供の勉強に対する動機(外発的/内発的)を上げるために、親としてどうすればいいか
  • 社員は給与にばかり目が行っており、仕事に対する動機(内発的)を持って欲しい

 

気分が上がらない時も受け入れる

気分が上がらず仕事や勉強に打ち込めない時は、誰にも必ず訪れるでしょう。疲れが溜まってくると、知らず知らずのうちに気分は下がってきます。また家族や夫婦間での喧嘩や育児/教育などの悩み/問題を抱えていると、仕事や勉強へ集中し辛くなります。

気分の浮き沈みはどれだけ自分でコントロールしようとしても、完璧にはいきません。どうしても気分がのらず沈んでいる時には、仕事から離れて気分転換したり、別のこと(別のタスク)をするほうがよいでしょう。締め切りが迫っていると調整が難しくなるので、日ごろから余裕を持ってスケジュールを立てるなどの計画性でカバーしましょう。

気分(感情)をコントロールする方法は、巷にたくさん転がっています。テクニックや姿勢を変えることである程度はコントロールすることができるでしょうが、無理しすぎると逆に精神的に崩れるリスクも高まります。気分が下がっていることを素直に受け入れて前向きに対処する方が、結果的に早く回復できるのではないでしょうか。

 

やる気を出すために、自己効力感を高めよう

やる気を出すために大切になるのが、カナダ人心理学者のアルバート・バンデューラが提唱した『自己効力感』という考え方です。

バンデューラは、行動遂行の先行要因として結果予期と効力予期の2つをあげた。結果予期とは、ある行動がある結果を生み出すという推測のことである。効力予期とは、ある結果を生み出すために必要な行動をうまく行うことが出来るという確信のことである。自己効力感とは、ある結果を生み出すために適切な行動を遂行できるという確信の程度、つまり自分が効力予期をどの程度持っているかを認知することをさす。

Wikipedia
自己効力感の説明(Wikipediaより)

人間が行動を起こす(やる気を出す)には、『①自分が取るべき行動がわかり』、『②その行動を自分ができると信じられる』ことの2つが大切ということです。

自己効力感を高める方法として、バンデューラは4つの方法を挙げています。

  1. 達成経験:自らの成功経験を積み重ねる
  2. 代理的体験:他者の成功を観察することにより、成功イメージを積み重ねる
  3. 言語的説得:他者から褒められたり、賞賛されたりする経験を積み重ねる
  4. 生理的感情的状態:気分を高めたり、良い心理状態にする

私は本やテレビ(カンブリア宮殿など)などから、代理的経験を積むことが大好きです。また他者の成功を理解しながらイメージすることにより、気分も高まります。

 

仕事や学習の根っこには動機付け

変化しやすく不安定な『気分』や『やる気』を中心にすると、腰を据えて仕事や勉強に取り組むが難しくなります。そこで大切なるのが『動機付け』です。

動機付け:
心理学で、生活体に行動を起こさせ、目標に向かわせる心理的な過程をいう。内的要因と外的要因の相互作用で成立する。モチベーション。

デジタル大辞泉 より

目的/目標に向けて行動させる心理的過程であり、他者など外部的な要因を外発的動機付け、自らによるものを内発的動機付けと言います。

以前のブログ『自律に向けたステップ~中国は政府主導で脱過保護!?~』でも紹介した、マズローの欲求段階説を用いて説明します。

マズローの欲求段階説をもとにした働く動機

生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求(他者からの評価)という、他者から与えられることによって満たされる欲求を目的にして行動を促すことが外発的動機付けです。一方自己による納得(承認欲求)や自己実現など、自分によってしか満たすことができない欲求を目的にして行動を促すことが内発的動機付けです。

内的動機と外的動機の境界線

親や上司などが外から積極的に関わって行えるのは、アメとムチのように外発的動機付けまでです。内発的動機付けは自らの考えや想いが起点になっているため、自分で火をつけることが必要ですが、一度火が灯ると持続するという特性を持っています。また自分でコントロールできる欲求でもあるため、自分の幸せ(欲求)を自分でコントロールできる自律した状態でもあります。

『内発的動機』を根っこに持ちながら、上手に『外発的動機』や『やる気』、『気分』を活用していくことが、大切ではないでしょうか。

 

不安定な自分を支える体制作り

持続的で比較的安定した内発的動機を持っていても、人間は感情の生き物ですから浮き沈みはあります。そこで重要になってくるのが、自分が沈んだ時に支えてくれる仲間の存在でしょう。会社やプロジェクトなどチームで働く意義は、気持ちが沈んだ時にお互いフォローするという作用もあります。

ドラマ『ドラゴン桜』でも、同じ東大合格という目標に向けて努力する仲間の大切さが語られていました。お互いに教え合うという意味が大きいのでしょうが、問題を抱える生徒が他の生徒の支えも得ながら問題を乗り越える姿は、チームや仲間の大切さを改めて感じさせてくれました。

内発的動機になる自分の目標(夢)を根っこに持つことは大切です。ただ長い人生のなかで、浮き沈みなく生きていくことは不可能でしょう。特に高い目標を掲げれば困難も多く、一人で進み続けることは困難です。持続的な原動力となりうる内発的動機を明確にするとともに、自分の変化を支えてくれる仲間や環境を整備することにも目を向けてみませんか。