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企業にも求められる公共(社会/自然)とのバランス
最近の企業経営者は、大変さが更に増しています。
目まぐるしいスピードで変化する外部環境と顧客ニーズに、対応しないといけない。
昨年からはコロナの影響で、事業活動も大幅に制限されています。
そのうえ我々消費者が製品やサービスを選ぶ基準が変わってきており、使用する原材料やエネルギーの生産方法にまで細心の注意を払わないといけません。
消費者庁が消費者への啓蒙を行っているウェブサイトでは、『エシカル消費(倫理的消費)』について紹介されています。
エシカル(※)消費とは、地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動のことです。私たち一人一人が、社会的な課題に気付き、日々のお買物を通して、その課題の解決のために、自分は何ができるのかを考えてみること、これが、エシカル消費の第一歩です。 (※)エシカル=倫理的・道徳的
消費者庁 エシカル消費特設サイト
単純に品質や機能、デザイン性と値段だけではなく、原材料を含めた製造過程における労働環境や自然への配慮まで気にする顧客(消費者)が増えてきているのです。
デジタルの世界にも環境保護!?
デジタル化が進むとペーパーレスも進み、自然にもよさそうな気がします。
ただしデジタル業界にも、環境問題は付いて回るようになっています。
まずデジタルに欠かせないのが、『半導体』です。
家電や自動車などあらゆるモノのデジタル化に伴い需要が増加しており、外交問題などとも相まって、世界中で半導体不足が問題になっています。
この半導体を世界で一番多く製造している台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)も、環境問題を指摘されています。
半導体の生産には多くの電力と水が消費され、地球温暖化の原因となるガスが排出されているのです。
そのためTSMCは、環境保護に配慮した取り組みを迫られています。
TSMCは50年までに再生可能エネルギー利用を100%に引き上げると約束し、昨年7月には台湾の脱炭素に向けた一環でデンマークのオーステッドが台湾海峡に建設する920メガワット(MW)の洋上風力発電所の全出力を購入する契約に署名した。
半導体需要増加でCO2排出も拡大ーESG絡みで業界ジレンマ
製品利用時だけでなく「製造プロセスにおいてもユニット当たりのエネルギーおよび資源の消費と汚染を減らすため、より高度かつ効率的な技術の開発を続ける」との発表文をTSMCは出し、再生可能エネルギーの利用を増やし温室効果ガス排出を削減する取り組みを続けると付け加えた。
仮想通貨やNFTも、環境を破壊している!?
デジタルアートに投資マネーが流入し、バブルになっているというニュースを目にしました。
デジタルといえば容易にコピーが可能で希少性はないはずなのにと疑問を持ちつつ記事を読むと、『NFT』という技術を活用して所有権が保護できるようになったとのこと。
NFT(Non-Fungible Token、代替不可能なトークン)は、ブロックチェーンの独自のデジタルトークンで、アート作品やトレーディングカード、コンサートのチケットなどのデジタルな作品や商品の所有権を売買するもの。文字通り代替不可能、分割不可能なので、購入者の所有権は強固に保護され、転売されてもブロックチェーンで履歴を辿れるので、その作品が本物であることが証明できるとされている。
上記記事(TwitterのドーシーCEOの初ツイートNFT、3億円超で落札 全額寄付)より
美術品に対する鑑定書のようなもので、唯一のオリジナルであることを証明することができるため、希少性を担保できるようになったので投機の対象になり値段が上がったということのようです。
この技術が普及するとデジタル関連のビジネスが更に多く生まれそうだなと考えたのですが、そもそも普及するのかという疑問が浮かびました。
NFTや仮想通貨に使われるブロックチェーン技術は、世界中に点在する大量のサーバー(パソコン)に大量処理をさせて運用されていると理解していたからです。
つまり電力を大量に消費しながら運用されているのです。
これでは日本の成長の源泉としているグリーンとデジタルが矛盾してしまうのではと心配になり、ネットで調べてみました。
日本の年間電力消費量は約950TWhですので、日本全国の2か月弱の電力がビットコインを運用するために使われているようです。
電気自動車販売の決算手段として導入したテスラも、環境負荷を理由にビットコインによる決済を停止しました。
よりクリーンな技術への転換
仮想通貨をビジネスとしている団体も、あの手この手で環境対策に乗り出しているようです。
環境団体への寄付や省エネ技術への転換だけに留まらず、クリーンな発電技術の開発や事業化への投資などを通して、社会全体へのよい影響も期待されます。
新しい技術により素晴らしい未来を築くために
仮想通貨やNFTが普及するには、環境問題以上に多くの課題を抱えています。
(既存通貨に対する挑戦、既存プラットフォームへの挑戦、既得権益への挑戦・・・)
ただし仮想通貨やNFTにより、現在抱える多くの課題が解決されることも事実です。
新しい技術による将来像(ビジョン)を描く際には、自己を中心に置くのではなく、他者・自然・未来への影響など、より広い範囲を考慮することが益々大切になっています。
考慮が不足していると、高い共感は生まれません。
共感されない将来像では、既存の仕組みに打ち勝つのは困難です。
より広い範囲のことにまで想像を及ばせるには、視野の広さも欠かせません。
またどのようなパースペクティブ(大局観/視座)で物事を捉えるかによって、事実の背後に隠れている真実を見抜けるかにも関わってきます。
視野の拡大を通して、視座を変え、自らの大局観を養うことが大切です。
広い視野で個と公共のバランスを考え、共感される素晴らしい未来を築いていきたいですね。