目指す社会の姿を考える
~人との繋がりが近づいた社会(Internet of Beings)~

コロナ禍で頻繁に議論されたテーマに、『感染抑制と個人の活動制限(外出や経済活動など)のバランス』があります。

個人の自由と公共の利益をどうバランスさせるかということであり、これからも重要性が下がることはないでしょう。

 

個と公共を議論する際には、まずお互いが『目指す社会の姿(ビジョン)』をどのように描いているか、確認することが重要です。

デジタル化によって人との繋がりが近づいていることも考慮して、今後の社会(公共)について考えます。

 

 

効率化の行きつく先は、『肉の海の世界』(上田氏)

『迷子になる地図』の由来でも紹介しましたが、オードリー・タン氏と上田岳弘氏の対談記事は、色々と考えさせられます。

「世界は1つになり、終わるのか」、台湾デジタル大臣とIT企業役員の作家に見える未来オードリー・タン氏と語り合う(上)

<上田氏の発言>
・繰り返し書いているのが「肉の海」というビジョンです。ざっくり言うと、人間が一塊になってしまう。
・人々を一塊にしてしまったほうが効率は上がるが、僕にとっては怖いことのように思え、そこを表現したいと書いてきました。

<タン氏の発言>
デジタルは人と人をつなぐ、それがインターネット・オブ・ビーイングスだと言いました。
・インターネット・オブ・ビーイングスの世界では、人と人の距離が短いほうが素早く対応でき、より共感できるのでよいわけですが、短すぎるとコミュニケーションができなくなってしまいます。
同じ現象に接しても異なるクオリアを持つということです。(qualiaは個々人が主観的に感じる質を指す)

上記記事より引用

上田氏はデジタル化により効率化の行きつく先は、同質化が究極に進んだ世界(肉の海)だという危機感を持たれています。

それに対してタン氏はデジタル化で目指す姿は、一人一人が自己の主観を持つことだと言われています。

 

 

共通の価値を見つけ出す『共好の社会』(タン氏)

一人一人が自己の主観を持つ社会について、タン氏の書籍で述べられていました。

オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

お互いに交流し共通の価値を探し出すことを、中国語で『共好(ゴンハオ)』と言います。(省略)相互理解のプロセスにおいて、相手には相手の価値観があり、自分には自分の価値観があります。それを常に頭の片隅に置いて、どうやって皆が受け入れることのできる価値観を見つけ出せるのかを考えながら共同で作業する。それが『共好』です。

上記書籍より引用

 

 

価値観に対する考え方次第で、実現される社会は異なる

同一化した社会(肉の海)は、一つの価値観に皆が同一化していく『絶対的な価値観の世界』。

共好の社会は、コミュニケーションを通して皆が受け入れられる価値観を形成していく『相対的な価値観の世界』。

一つの価値観を共有する世界でも、価値観に対する考え方次第で大きく異なります。

 

 

あなたの会社や家庭は?

上記の話を会社や家庭などに、当てはめてみましょう。

 

<会社/組織>

  • 社長を絶対的な存在とし、社員はただ従うことが求められる上意下達型組織
  • 社員自ら実現したい姿や価値観を議論し、主体的な運営が求められる自律型組織

<家庭/家族>

  • 子は親の言う通りにすれば、幸せな将来が約束されていると考える家庭
  • 子も主体的に自分の将来を考え、親と子の対話を通して将来を考える家庭

 

皆さんの会社や家庭は、どちらの状態に近いでしょうか?

また将来の成長や幸福のために、どちらの状態を目指したいでしょうか?

 

経済が右肩上がりの環境では、上位者(社長や親)の指示に従い効率よく仕事や勉強をこなすことが、成長や幸せの近道でした。

今は、これまで普遍的な価値観として存在していた、『資本主義』や『民主主義』、『アメリカによる世界平和(パクス・アメリカーナ)』ですら、揺らいでいます。

また自分の考えや価値観を大切にすることが、自分の幸せに繋がるという考え方も、一般化してきています。

 

コロナという外部からの刺激により、変化が加速しています。

 

 

これからの幸せに向け、立ち止まって考える

  • 会社/組織の目指す姿は?
  • 家族の目指す姿は?
  • 地域や国の目指す姿は?

 

状況の変化を正しく捉えた上で、どの様な姿を目指したいか。

少し立ち止まって、考えてみるのは如何でしょうか?

そして自ら考えたことを、仲間(会社の社員/同僚/経営者)や家族と共有してみましょう。

 

一見無駄に見えるかもしれませんが、将来の幸せに繋がる大切な時間になるはずです。