倫理観をどう育てるか?
~スマホ依存、ネット依存にみる
 デジタル化への向き合い方~

目次

ゲーム条例施行から1年

香川県でゲーム条例が施行して1年が経過したというニュースを耳にした。 コロナ禍のステイホームの影響もあり、利用時間や依存度は増加しているようである。

ゲーム条例施行から約1年…ネット・ゲーム依存傾向「やや強まる」 香川県教委が実態調査(KSB 5chニュース)
https://news.ksb.co.jp/article/14250772

スマホ依存による影響

『スマホ依存』とは、スマホのゲームやSNSなどに熱中し、生活に支障が出てしまうほど長時間利用してしまう状態である。影響として視力低下や体重・筋力低下といった身体面だけでなく、睡眠障害、攻撃性の増加など精神面や脳の成長に対しても懸念があると言われている。

もともと90年代から『ネット依存症』という問題はあったが、iPhoneの発売された2007年頃からスマホの利用者が急激に増加したことにより社会問題として取り上げることが多くなった。19年にはWHOも『ゲーム障害』を国際疾病として認定している。

スマホ依存の低年齢化も問題となって久しい。子育ての手間を省くために、親が子どもにスマホを持たせる。特に、女の子よりも男の子、より幼い子供ほど主体性が低いため、依存度が高い傾向にあるという。親子間の会話や共通の体験機会は減り、信頼関係づくりには逆効果となる。二児の父親である私にとっても耳の痛い問題である。

個人情報をどう守るかも大きな問題である。子供でもスマホで簡単に情報発信できるようになったために、フィッシング詐欺などによる金銭被害や、写真や画像などを含む個人情報を公開したことによる被害/加害など、発生すれば軽微では済まないため親としては目を背けることはできない。

親世代と今とを簡単に比較はできない

ここまで懸念点ばかりを挙げてきたが、個人的にはスマホのゲームやSNS、デジタル化に対しては悲観的な方ではない。ゲームやSNSで隙間時間を楽しむ人の気持ちはわかるし、技術革新により生活が豊かになるのは基本的に歓迎だ。日本の産業としても、なくてはならないものとなっている。

昔のことを思い返すと、私はファミコン世代なので新しいゲームが手に入ったと聞くとその友達の家に集まっては部屋に籠って遊んだ。ゲームの内容を知らないと友達の会話に入れないこともあった。新しいゲームが発売された直後などは、寝食も忘れクリアするまで昼夜没頭したため、「しばらくゲーム禁止」と親から怒られたのを覚えている。

しかし、ある時から全くゲームをしなくなった。遊び友達の多くと一緒に少年野球のチームに入ってしまったので、みんなと外で体を動かしている方がゲームよりも楽しくなったからだ。

当時のゲームはネットにも繋がっておらずクリアしたらすぐに飽きてしまうものだった。今のネトゲ(ネットワークゲーム)の様にエンドレスなシナリオが組み立てられ、インターネットに繋がり新しい機能が次から次へと追加され、同じ興味を持つ人と手軽につながって会話を楽しむような魅力的な仕掛けがあれば、ついついやり続けてしまうのも無理はない。

昔と今とを簡単に比較できないのである。

倫理観の必要性とどう育むか?

タイトルにある、『倫理観』を育む必要があるという考えに至ったかを説明する。

コロナ禍の影響により今後もしばらくデジタル化は加速していくだろう。

教育面では、文科省がGIGAスクール構想として、学校で1人1台デジタル機器を使うようにと準備を進めている。デジタル技術を活用した様々な経済(消費・生産)活動により生活の利便性はますます向上していく。そして、ゲームやSNSにおいては、これからも新しいものが出現してはユーザを魅了していくに違いない。

デジタル化によりあらゆる情報がデータとして収集、蓄積、加工、配信が可能となり、従来はサービスの享受側だった個人が、簡単に提供側となる。個性を重視し、多様性と受容性を前提とした様々な技術が開発され、サービスが次々と提供される。利便性や効率性を重視してAIがそれをブラックボックス化する。制御できなくなった場合のことを考えると、手放しでは喜べない世界である。

そのような中で、私たちはデジタル化の恩恵を享受しながら上手に付き合っていくには、個人も、企業も、一人ひとりが自分や周りの環境に対して良し悪しを判断する力(倫理観)を育んでいくことが重要であると考えたのだ。

ネチケットという言葉が使われなくなったように、日進月歩の変化を遂げるデジタル化において、倫理観から派生するルールは常に変化している。自らの行動による影響やリスクをしっかりと想像するための情報リテラシーのアップデートとともに、倫理観も見直しが必要となるのではないか。

子育て世代であれば、文科省が教育指導要領をまとめるのを待っているのではなく、また、企業経営者・幹部の方は、社内でDXプロジェクトを立ち上げる前に、今起きている問題をテーマにして「倫理観をどう育むか?」ついて、家族や、社内の周りの人と話し合ってはどうだろうか?

「倫理観をどう育むか?」を考える際のポイント

  • その判断・行動は、自らの理想と、方向性が合致しているか。
  • 何が正しいのか、それはなぜか。(正しさの基準とは何か。)
  • その基準は、周囲(自分を含む環境)に対する影響を考慮したものか。
  • 同じ状況が起きたら、同じ判断を継続できるか。
  • その判断基準を周囲の人に説明できるか、共感を得ることができるか?

一人ひとりが倫理的な主体をしっかりと作らないとポストコロナ・ウィズコロナの社会は混沌としてしまうだろう。

日本の長期低迷に終止符を打つためにも、教育の役割は非常に大きいと思う。