最近、虫に触りましたか?

私が子供の頃には近所でザリガニやメダカ、バッタやカマキリなどを捕まえ観察したりして、子供なりに自然からいろいろと学びました。

「人間と自然」

捕まえた虫をほったらかしにして、死なせてしまった人も少なくないでしょう。最近は図鑑も電子書籍になり、本物を観察するよりも手軽に、しかも詳細に生き物の特徴を知ることができます。しかし、自分の子供を見ていると、電子書籍の図鑑だけでは『生きもの』を正しく理解できないのではないかと感じることがあります。なぜならそこからは生き物との対話や交流が生まれないからです。

「デジタル」

コロナ禍により大企業を中心にリモートワークが一気に広がりました。ウェブ会議システムや仮想空間を実現する技術の発展により、我々の生活にバーチャルな世界が深く関わるようになりました。それは我々の生活を便利にしただけでなく、生活スタイルの選択肢を広げてくれました。一方で、バーチャルな世界に偏重しリアルな世界をないがしろにしていると大切なものが失われていくのではないかという懸念があります。

「個と公」

例えば、学校ではオンライン授業が増える一方、人との関りが減っており、社会性を身に着ける機会が少なくなることは大きな心配です。特に、大学時代というのは専門知識を学ぶことに加えて、学内外の様々な環境で他者と関わり合いながら、自らの価値観を形成していく大切な時期です。異なる考えを持つ人達と衝突することもあるでしょう。自らの目的を達成するために、彼らの協力を得ることが必要であれば、何をすればいいのかを考え「個と公のバランス」をとる力を育てることができるのです。

現状のままでは、個人の自由や権利ばかりを主張する個人主義が行き過ぎて、殺伐とした社会とならないでしょうか。この流れを変えるために、学生に対しては、リアルの大切さを意識させつつ、デジタル技術によってそれを補完できるような支援を考えるべきです。

一人ひとりが自然や他者との関わりの中から、自己の価値観や倫理観を持つことが重要です。デジタル技術がいくら発達しても、それらを活用する人間ならではの意義は『自分独自の見方を持っていること』に変わりはないのですから。