『困った人』にならないために 
~具体と抽象を行ったり来たり~

職場の困った人

どの様に成長を促したり、注意をすればいいのか分からない『困った人』が、どの職場にもいます。
<困った人の特徴>
 ・詳細な方法まで決めてもらわないと、動き始められない人(指示待ち屋)
 ・会議では他人の揚げ足取りで、自己正当化にはしる人(評論家)
 ・仕事に理想ばかりを追い求め、目の前の仕事を蔑ろにする人(夢待ち人)

そして困った人は、自分に問題がある自覚がないことも問題です。自覚があれば改善の余地はあるのですが、自覚がないと逆に自己正当化や責任転嫁をすることもあります。

一方で困った人と正反対の『デキル人』も、職場に一人か二人は居ます。
<デキル人の特徴>
 ・目的や背景を話せば、自ら手段を考えてどんどん進められる人(推進役)
 ・関係者の目的意識を合わせ、実現に向けて建設的な議論を進められる人(共創屋)
 ・仕事の意義を広く捉え、目の前の仕事も自分事として主体的に取り組める人(未来創造者)

この二人の差は、いったいどこから来るのでしょうか?実は『困った人』と『デキル人』は、見えている世界が違うのです。

 

見えている世界の違い(具体的と抽象的)

困った人とデキル人が見えている世界

困った人が住んでいるのは『具体的な世界』、デキル人が住んでいるのは『抽象的な世界』です。

それぞれの世界の特徴

そして抽象的な世界からは具体的な世界を見ることはできるが、具体的な世界からは抽象的な世界が見えません。つまりデキル人は、具体的と抽象的を行ったり来たり(具体化と抽象化)することが出来るのですが、困った人は具体化や抽象化が出来ず具体的な事柄しか見えていない(抽象的なことを理解できない)のです。

 

指示待ち屋から推進役に

具体的な世界だけ見えている人は、その作業の目的に関心が及びません。逆に目的を手段に具体化することもできません。そのため指示されたまま実行し、上手くいかなかった場合は次の作業指示を待つしかありません。詳細まで上司に決めてもらわないと、行動を開始できない『指示待ち屋』から抜け出せません。

一方自分で目的から手段に具体化できる人は、上司から仕事の目的や経緯を説明されれば、具体的な方法は自ら考えることが出来ます。また実行して上手くいかなければ目的に立ち返り、他の方法を考えて自ら目的を達成できるように進める『推進役』になれます。

つまり抽象化能力(具体化能力)が高い人は、手段の上位にある目的をきちんと捉えることができるので、今ある手段に固着することもなく、手段の目的化という罠に陥るリスクも低いのです。

 

評論家から共創家に

抽象化能力が高い人は、目的と手段の連鎖を捉えることが出来るようになります。この連鎖が見えると、手段Aと手段Bで揉めている人たちに対して、目的に立ち返って手段の評価を促すことが出来ます。また更にその上位の目的まで参加者の認識を引き上げることにより、より協力的な関係性を築くことも可能になります。

目的と手段の連鎖

 

夢待ち人から未来創造者へ

仕事を自分事化として捉え仕事に情熱を注ぐためには、『自分のやりたいこと(Will)』と『自分に期待されていること(Must)』を上手く重ねることが大切です。また自分のやれること(Can)も、重ねないといけません。詳細については、ブログ『子供の頃の夢は何ですか?~周りに影響されず安定して仕事を行う~』を参考にして下さい。

仕事に情熱を注ぐために重ねるべき三つの視点

仕事や自分のやりたいことを具体的なまま捉えると、重なり合う可能性は低くなります。一方抽象的に捉えることが出来ると、どの様な仕事でも自分のやりたいことや希望と、ある程度は重ね合わせることが出来るようになります。今の仕事は自分の『やりたいこと』と違うと思っている人は、一度自分のやりたいことを抽象化して、本質を捉え直すのはいかがでしょうか。

 

立場が上がると求められるスキルも変わる

抽象化能力は、『コンセプチュアルスキル』とも言われます。組織において立場が上がれば上がるほど、物事を抽象化することが求められます。

そのため、立場が上がれば求められるスキルも変わります。

コンセプチュアルスキルについては、ブログ『群衆心理から抜け出し連帯を目指そう~群衆心理 ル・ボン~』でも紹介していますので参考にしてみてください。

 

抽象化能力を鍛えるためには迷子になろう

抽象化能力を鍛える方法は、様々な本やウェブサイトで紹介されています。私が振り返ってみて有効だと思うのは、以下の二つです。

  1. 日々の仕事において、その目的や理由を常に考える
  2. 日常の問題や疑問に対して、多角的な視点から深く考える

私は新人の頃先輩に、仕事を受ける時は仕事の目的(誰のどのような期待に応えるために行う仕事か)を確認することが何よりも大切と教わりました。それから仕事をする時には、必ずその仕事の目的について認識を合わせるようにしています。また誰かに仕事を依頼する際には、仕事の目的を出来るだけ具体的に伝えて、相手の理解状況を確認するようにしています。初めのうちは、自分が担当する作業の目的だけを考えるようにしていたのですが、慣れてくるとその目的の上位にある目的を考えるようになっていました。より上位の目的を考えることにより、より抽象化する訓練が出来ていたのだと思います。

仕事以外では、身近なニュースや疑問について色々と考えてみることも大切だと思っています。あるテーマ(ニュースや疑問)について、考えついたことをノートにどんどん書き出し、それらのなかから共通点を見つけたり、色々な視点で分類したりします。お勧めは、このブログでも紹介している6つの視点です。このような思考を繰り返すことにより、本質を抽出する訓練にもなります。

 

子供の頃から学校の勉強は、具体的な問題を如何に早く正確に解くかを求められてきました。仕事においても生産性のために細分化された末端のタスクを正確に早く解くことを求められてきました。急に自由に考えたり、抽象的なことを求められても面食らってしまうかもしれません。

まずは気軽にこのブログサイトの様々なテーマに対する考え方や捉え方に触れ、少しずつ抽象化能力を鍛え、抽象的な世界の住民を目指しませんか。抽象的な世界の住民は、迷子になる名人でもあります。