多様性が活きる組織に向けて
~ゼロ・コンフリクト体質から抜け出そう~

目次

対立はネガティブなことか?

皆さんは『コンフリクト(対立)』という言葉に対して、どのような印象がありますか?
和を大切にすることを幼少期から叩き込まれてきた我々日本人にとって、『対立』とは避けるべきネガティブなものというイメージがあるのではないでしょうか。

ただ極端に対立を避ける日本人の『ゼロ・コンフリクト体質』は、多様性の社会において大きな問題になると考えています。

 

多様性の目的は、よりよい考えを導くこと

以前は『協調性』や『和』という言葉が過度に強調されてきたこともあり、多数派や上位者と異なる意見を発表し辛い雰囲気がありました。
最近は『多様性』が流行したこともあり、少数派の意見を伝えやすくなりました。

色々な会社を見ていると、個性(多様な考えや価値観)を認めるステージで留まっており、多様性のメリットを十分には享受できていないように感じています。

これまで日本人男性だけがやってきた仕事を、女性や外国人にも担ってもらうことで労働人口減少に対応することが目的であれば、目的は達成されるかもしれません。

ただ多くの企業では単純な労働人材の確保が、多様性の目的ではないはずです。
正解が不明確になるなか、異なる視点や視座からの考えをぶつけ合うことにより、組織としてよりよい考えを出せるようにすることが多様化の目的ではないでしょうか。

よりよい考えを導くためには個性を認めるだけでは不十分で、うまく対立を生み出しコントロールすることが必要になります。

 

コンフリクト・マネジメントを身に着けよう

弊社ではコンサルタント育成の最初に、『コンフリクト・マネジメント』を学びます。

コンフリクト・マネジメントの概念図

コンサルタントは様々な役割を担う必要がありますが、会議の進行役も重要な役割の一つです。
会議の議論を活発にして色々な意見を出してもらい、そのなかから目的に最適な考えを導いていく必要があります。

会議での発言が少なかったり、一つの意見に対して追随する発言ばかりだと、対立は生まれず会議する意味がありません。
また自分の意見を一方的に主張するだけで、相手の意見を理解しようとしなければ、極端な対立に陥り結論を導き出すことが出来なくなります。

会議の進行役だけでなく参加者全員がコンフリクト・マネジメントを意識していると、会議の効率も上がり、短時間で質の高い結論が出やすくなります。

コンフリクト・マネジメントを説明している短い動画も作っていますので、こちらも参考にしてください。

コンフリクトマネジメントでチームの成果を最大化にしましょう。 ibg business 101

 

多様性を活かす組織風土

コンフリクト・マネジメントを身に着けても、組織風土が旧態依然では多様性を活かすのは難しいでしょう。

組織は個人の集まりとして成り立っているので、自分と他者との関係の傾向から組織風土を捉えることが出来ると考えます。
縦軸に自己の主張(考え)の強さ、横軸に他者に対する理解(疑念)の強さを取って、組織の傾向(風土)を定義したのが以下の図です。

自己と他者との関係から組織風土を定義

ベテラン記者にわかりやすく記事にしてもらったことがあったので、その記事から引用します。

多くの日本人と日本企業は「自己の信念・主張」はさほど強くないが「他者への理解・疑念」は強いと考えられるので図の右下に位置する。組織の和を乱す主張をせず、周囲に理解を示すのはまさに協調であり長所だが、たとえ疑念を抱いてもそれを主張しないとなると、見かけ上はまとまっていても実態は「迎合・服従」型の人間関係になりかねない。(中略)

「自己の信念・主張」も「他者への理解・疑念」も旺盛な右上を「信頼・協業」型と名づけた。ibgのコンサルタント、大西隆仁氏はこの型を「年代や経験の異なるメンバー間であっても互いの信念や考えに疑いをぶつけ合い、相互理解を深めつつ、より良いアイデアを導き出し、協力してそのアイデアを実行できる組織」と説明する。

協調性は隠れみの、馴れ合いと迎合の場にとどまる日本の組織 谷島 宣之(日経BP)

 

多様性が活きる組織風土に必要な3要素

多様性が活きる組織風土に向けて、大切な要素が3つあります。

① 共感された組織目標を持つ
② 自分の考え(価値観や判断基準)を持つ
③ 言語力を磨く

 

共感された組織目標を持つ

組織での議論は多様な人材が考えをぶつけ合い、組織目標の実現に向けて最適なアイデアを導くことが目的です。
議論の目的となる組織目標が曖昧であったり、理解がずれていると、議論がかみあうはずがありません。

会社では企業理念やビジョン、最近ではパーパスという言葉で定義されています。
ただ社員が正しく理解し共感し自分事として捉えているかを重視している会社は、決して多くないと感じています。

『家庭の目標』という言葉は、あまりなじみがないかと思います。
家族全員が幸せに暮らしたいというのは暗黙の了解なのでしょうが、『幸せ』の定義は家族でも一人一人異なるはずです。
夫婦間や親子間で話し合い、自分の家庭の目標(目指したい家族像/家庭像、幸せとは)を定義してみては如何でしょうか。

 

自分の考え(価値観や判断基準)を持つ

自分の考えがないと、他人の考えに賛同するか反発するかのどちらかしか選べません。
色々な情報や考えに触れて、自分の考えを持つことは大切です。

言われたことに従い、ただ仕事をこなすだけの人材では、組織の一員を担うことが更に難しくなるはずです。
そして何よりも自分の考えを持つということは、幸せな自分の人生を生きるためのコンパスや地図を持つこととも言えます。

 

言語力を磨く

自分の考えを相手に理解してもらうためには、適切な言葉を選んで説明することも大切です。
ただ言語力は単に相手へ伝える手段に留まるのではなく、『自分で考えること』と『相手を理解すること』においても重要になります。

人は自分の頭の中で考える際にも、母国語という言語を使って思考しています。
つまり自分の語彙力以上に想像(イマジネーション)したり、思考したりすることはできないのです。

また相手を理解するには、言葉から相手の気持ちを感じることも大切です。
言葉に対して敏感になれると、相手が選んだ言葉の裏にある感情を推し量ることもでき、より深く相手の考えを理解することに繋がります。

 

 

会社も家庭も組織と捉えて、所属する一人一人がより幸せになれるための組織と個人のあり方について話してきました。

協調性や多様性の意義を再度確認し、本来のメリットを生み出せるように考えてみませんか。