AI時代における人間の役割と価値
~自分らしさを大切に~

AI(人工知能)という言葉を耳にするようになって、随分時間が経ちました。以前は自分の仕事や生活にあまり関係がないと思っていましたが、今では『Chat GPT(OpenAI社)』や『COPILOT(Microsoft社)』などの生成AIを活用している人も増えています。私もブログ原稿のブラッシュアップに、Chat GPTとの対話を活用しています。今回はAIのおさらいを通して、AI時代に我々が大切にするべきことについて考えてみたいと思います。

 

AIの強みと限界

AIは人間の学習を模倣?

AIとはコンピュータが人間のように学習し、考え、判断する能力を持つ技術と言われています。脳が情報を処理する仕組みをコンピュータで再現したものを、『ニューラルネットワーク』と呼びます。皆さんも生物の授業などで、脳の神経細胞(ニューロン)が電気信号を出すことで、考えたり、体を動かしているという話を聞いているはずです。繰り返し考えることでニューロン同士の結びつきが強まり、理解して覚える(身に着ける)ことが学習です。AIは機械(コンピュータ)が人間のように情報を処理して学ぶので、機械学習と呼ばれています。

 

経験と勘の人間 VS 高速大量データ処理のAI

人間とAIの学習する仕組みの違いについて、スーパーのお惣菜を売り切るための値引き率算出を例に考えてみましょう。

人間の場合、天気や気温、お惣菜の残数、閉店までの時間など様々な要素から過去の近い状況を思い出し、完売するための割引率を決めます。個人の経験が精度を左右するので、ベテランのなせる技です。

AIは過去実績データをもとに影響要素を分析し、完売するための値引き率を算出する構造(モデル)を設計します。また学習データ(過去実績)を大量に処理(分析)することで、修正して精度を高めます。人間が自分で経験を積み重ねるよりも、コンピュータがデータを処理する方が速いので、AIの方が学習効率では優っています。

ニューラルネットワークの構造を使った機械学習のイメージ

  

他者を納得させるのは人間の役割

学習モデルを設計するには、専門の知識や経験を持つ人材が必要でした。ところが最近ではこの調整をAI(システム)が行うことも可能になっています。つまりAIが自ら学び、成長(精度を高める)できるようになっているのです。

学習モデルのチューニングのイメージ

ただAIは過去データに基づく予測(仮説)を出しているだけなので、最後は人による判断が必要になります。そして人間が判断した選択肢の理由を明確にし、関係者が納得できる形で説明して共感を得ることが大切です。

多くの関係者に影響が出る政治や経営に関するテーマでは、必ず反対派が生まれます。反対派にもある程度納得してもらうことが、出した答えを成功(成果)に導くためには必要です。台湾のオードリー・タン氏も、『関係者が共感するために、相手を理解して説明するのが自分の役割』と話されていました。

 

AIの質を決めるデータの価値

玉石混合のデータから本物を見極める

AIの発展には、機械学習に必要となる大量のデータが欠かせません。パソコンやインターネット、その後のスマートフォンの普及により、あらゆる情報のデジタル化が進みました。さらにインターネットの普及により、個人が自由に情報を発信することが可能となり、データの増加に拍車をかけています。デジタルデータはAIの活用と成長には欠かせないのですが、データ源が曖昧になり信頼性の低いデータも増えています。AIに使用すべきデータの取捨選択が、大切になっています。

また個人だけでなく各国が自分達の有利になるような情報を大量に発信していることも、データの取捨選択を難しくする一因になっています。プロパガンダ(情報戦)は昔からありますが、直接世界中の人々にアクセスすることが可能になったため、より活発になっています。

 

自分独自のデータで差別化

AIがあらゆるデータに繋がり、学習モデルも自動で生成できるようになると、誰もが同じ答えにたどり着くことになってしまいます。そこで大切になるのが、自分らしいデータを持つことです。自分の考えを論文やブログ、日記としてまとめている人は、自分の価値観や世界観をAIのインプットにすることが出来ます。これにより、自分の思考や価値観に近い形で、AIにデータ処理をさせることが可能になります。少しずつでも自分の考えを文章にすることが、将来の競争力に繋がります。

AI業界でも有名な落合陽一氏がYouTubeで、自分なりのAIを育てることについて話していました。

『自分なりのAIを育てる』と『自分なりのキャリアを育てる』は、ほぼ同じ。無駄な小手先の技を覚えず、人間として面白くなれる方法を頑張って考えていただきたい。

落合陽一:2024年は超AIが来る より

落合氏は『ochyAI』という、自分を模したAIを育てているそうです。自分に近い思考を持ったオリジナルのAIが、落合氏の独自な価値を維持しながらAIを活用する武器になっているのでしょう。

 

人生においてAIを使う目的

人生におけるAIと人間のすみ分け

AIを活用する上で最も大切なことが、自分なりの目的を持っているかどうかです。

人生やキャリアにおける取り組みとAIの活用可能性
  • <実現したいこと>
    AIは『どのような世界にしたいか?』や『どのような問題を解決したいか?』、という目的を設定することは苦手です。これは自分で見つけるテーマです。
  • <⓪テーマの抽出>
    設定した目的に対して、どの様なことをすべきかについては、過去の事例や実績に基づいて網羅的に挙げることは可能です。ただ過去の延長ベースになるため、全く新しい発想やテーマが求められる場合、AIには難しいでしょう。
  • <①解決策の検討>
    決めたテーマについて、どの様な解決策があるかについては、様々な視点から解決策を挙げることはAIが得意です。また考えた仮説の検証にも、大量データ処理が得意なAIを活用できます。
  • <②解決策の決定>
    挙がった解決策から実施するものを選ぶ際は、メリット・デメリットの列挙はAIが得意です。それらを総合的に判断して決めるのは、人間の役割です。
  • <③解決策の実行>
    実際に進めるためには多くの協力者を得ながら、現場で人が動かす必要があります。
    ※上記『1-③ 他者を納得させるのは人間の役割』も参照

 

『どう生きたいか』が決まれば、AIが活きる

実現したいことが明確な人にとっては、これまで時間がかかっていた情報収集や分析などをAIに代替してもらうことで、やれることが圧倒的に増やせます。一方これまで仕事として情報収集や分析を行うことで給与を得たり、必要とされてきた人にとっては、AI時代は生き辛くなるでしょう。

前述の落合陽一氏のインタビューで、印象的なコメントをされていました。

(これからのAI時代において)どう生きたいかが分かっている人は楽。どう生きたいかが分かっていない人は相当大変。

落合陽一:2024年は超AIが来る より

 

今の日本社会では、自分がどう生きたいかが分かっている人が少ないように感じています。これは日本社会や文化、教育など様々な環境が関係しています。

やりたいことを見つけて自分らしく生きるために、自分探しの旅が必要なのです。迷子になる地図を使って、自分の考えを深掘りしたり、文章にしたりすることから始めてみませんか。また独自のAIを育てるインプットになる、自分の考えを文章にすることにもつながります。