仕事を楽しむ人生に
~アイデンティティを再確認~

仕事を楽しめない人

先日管理職手前の30代~40代前半を対象としたクライアント企業の研修に、同席しました。この研修は参加者一人一人に『自分がなりたいリーダー像』を考えてもらうことを目的に、半年間かけて実施されています。先日はそのなかの、部長たちの経験を共有してもらいながら意見交換を行い、参加者に気づきを得てもらう研修でした。

研修のなかで印象的だった、講師(部長)と参加者のやり取りがありました。50代半ばの部長が昔の自分を振り返り、『管理職一歩手前の時期は自分でやれることも増え、裁量も増えてきたので、仕事に楽しさを感じ始めた頃だった。皆さんは仕事を楽しんでいますか?』と投げかけたのですが、参加者は見事なまでの無反応だったのです。

また質疑応答の際には参加者から、以下の投げかけがありました。
『Aさん(講師の部長)は仕事を楽しめていることが、日々の仕事を見ていて感じられます。それが皆さんから慕われている理由だと思う。一方自分は仕事の楽しみ方が分からない。どうやって楽しめばいいのでしょうか?』

質問をされていた方は、とても素直で真面目な方です。『仕事の楽しみ方が分からない』というのは、本心からの訴えのように見えました。きっと多くの人が、仕事を楽しめていないのだろうなと実感させられました。

 

仕事に求める楽しさとは?

仕事において楽しむというのは、人によって捉え方が色々あるかと思います。自分の好きな領域の研究をすること、自分が尊敬する人と働くこと、自分が感じる社会課題に取り組むこと。正解は一つではありません。それでも、『自分のやりたいことが明確である』という共通点はありそうです。つまりはアイデンティティ(自分は何者か)を持つことができているかが、仕事を楽しむうえでのポイントになりそうです。

アイデンティティという言葉をWebで調べると、以下の内容が出てきました。

「アイデンティティ」とは、「自分は自分であると自覚すること」 「連続性のある自己認識を持つこと」 「自分の価値を他者に認められること」などを意味する表現である。わかりやすく言えば、自分が何者であるのかを認識して他者と区別できる状態である。

実用日本語表現辞典より

『連続性のある自己認識を持つ』ためには、しっかりと自分の過去を振り返り、自分を正しく客観視することが大切になります。具体的に言うと、過去どのようなことに興味を持ったのか、どの様なことに喜びや楽しさを感じたのか。逆にどのようなことは嫌だったのかを分析することで、過去から現在にかけて変わることのない、自分の核(価値観や考え方、信念)を見える化することです。

『自分の価値を他者に認められること』は少し言い換えると、自分はどのような価値を顧客や社会に提供したいか、どのような存在になりたいか(存在意義・存在価値)となります。大げさな表現のように見えますが、自分がこれまでどのようなことをして周りから感謝されることが多かったか、または周りからどのような期待や役割を求められることが多かったか。そのなかで自分としても嬉しかったり、高揚感や満足感を持つことが出来たのは、どのような時だったかを振り返ると、自然と見えてくるでしょう。

 

アイデンティティの見つけ方(私の場合)

自分の振り返りは、皆さん就職活動や転職活動、または年末年始などのタイミングで行われているでしょう。私も以前クライアント企業での研修内容を検討する際に、サンプルとして『人生の振返りグラフ』を作りました。

私の人生の振返りグラフ

人生における感情の浮き沈みをグラフ化して、上がり下がりの大きいポイントに対して具体的に振り返っています。その経験のなかで、感じたことや学んだことを抽出しながら、自分を形作っている考え方や価値観、好き嫌いを浮き彫りにしていきます。他人に誇れるような内容ではないのですが、年を重ねる毎に面の皮も厚くなり自己開示することの心理的ハードルが下がってきています。それでも、多少の恥ずかしさはありますが、、、。

 

自分らしさを『Will』、『Must』、『Can』でまとめてみよう

振返りを通して抽出した自分らしさをWill、Must、Canで整理すると、仕事や人生を通して自分が何をしたいのかが分かりやすくなります。Willは自分の実現したい状態です。Mustは、自分の担いたい役割や提供した価値/貢献です。そしてCanは、自分の特徴(強み)になります。つまりは、自分の強み・特徴【Can】を活かして、どのような価値を提供し【Must】、それによりどのような状態を実現したいか(人や会社、社会が抱える課題を解決して、どのような状態に変えたいか)【Will】を明らかにするのです。

こちらも以前作ったことがあったので、参考までに載せておきます。

私のWill、Must、Can(働く理由)

ちなみにCanは、ギャラップ社の『ストレングス・ファインダー』という分析診断の結果になっています。正式な診断だとそこそこの値段なのですが、『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』という書籍を購入すると簡易版の診断ができるアクセスコードがついているのでお勧めです。私もこちらの簡易版で、診断をしました。自分で質問に答えるので客観性が怪しいのではと思われる方もいますが、私の診断結果を周りの人に見せても納得感が高いとの反応が多かったです。

 

人生の半分以上の時間を使うことになる仕事。せっかくなので、自分らしさを確認して、仕事を楽しむ人生にしませんか。