『親ガチャ』という言葉が流行る背景
最近『親ガチャ』という言葉が、気になっています。
「ガチャ」の語源はカプセルに入った玩具がランダムに出てくる「ガチャガチャ」。(中略)
要するに「親ガチャ」というのは、自分の人生は親や家庭によって決まるところ大であり、にもかかわらずどんな親のもとに生まれてくるかは運任せ、金持ちの家庭ならアタリ、貧しい家庭ならハズレというような話だ。(中略)
建前と乖離した現実を前にして、「こんな社会で頑張っても仕方がない」と言う人もいれば、「社会のせいにせずに自分で努力しろ」と言う人もいるだろう。だが、どちらも社会の構造に手を付けない個々人の処世術のような話であって、生まれの恩恵を享受する一部の人にのみ都合のいい反応かもしれない。
親ガチャ論議が広がる日本は「緩やかな身分社会」 Newsweek
『親ガチャ』という言葉が流行る背景は、記事にある通り社会構造的な問題や格差などがあるのでしょう。
最近の若者の意識を示すデータに、日本財団の調査結果があります。
質問の仕方や日本人の性格(奥ゆかしい)などの影響もあるので単純に他国と比較できませんが、18才の若者が「自分で国や社会を変えられる」と思えないのは悲しいですね。
この調査では高いスコアになっている中国でも、最近は『寝そべり族』という言葉が流行っています。
どの国においても若者の将来に対するあきらめや、社会に対する不満は高まっているのでしょう。
寝そべり族について取りあげたブログも、参照ください。
今の自分を変えるには挑戦しかない
先日松山大学の東渕則之先生と打ち合わせを行った際、大学生の変化に関する話もうかがいました。
<東渕先生の発言>
日本全体で『成長』という言葉がそぐわない時代が続き、努力しても報われない社会という印象を持つ学生が増えている印象がある。
一方で人数は減っていても、目的を持ち努力している学生もいる。
彼ら/彼女らは、幼少期からチャレンジし、失敗や成功を繰り返してきている。
高校までに如何に『挑戦する機会』を作ることが出来るかが、重要ではないかと感じている。
『親ガチャ』という言葉の流行や若者の意識調査結果を統合して考えてみると、若者の「努力しても報われない」という、社会に対するあきらめや不信が高まっているのは事実のようです。
それではどのようにして、若者の『挑戦する機会』を増やしてくことが出来るのでしょうか。
社員の挑戦心を高めるには、信頼と自律が必要
東渕先生は統計学にもとづく企業調査を通して、会社経営に必要な要素を『成長ドライバ理論』というフレームワークで定義されています。
※成長ドライバ理論については、以下も参照してください。
● 成長ドライバ理論の総合的な説明
● 成長ドライバ理論に関するNote
東渕先生が数多くの企業を分析した結果、社員の挑戦意欲を高める際にはまず『信頼』を高め、そこから『自律』を高め、それから『ストレッチ(挑戦)』を高めるという前後関係が大切であるとのことでした。
- 【信頼】
経営者/上司に対する信頼感や会社における安心感などから、会社への愛着や帰属意識が生まれる - 【自律】
会社への愛着や帰属意識から社員が仕事を自分事として進めるようになり、そこから仕事へのやり甲斐を見出すようになる - 【ストレッチ(挑戦)】
更なる成果や挑戦に向けて、自ら新しいことにチャレンジする姿勢が生まれてくる
子供や若者の挑戦心を高めるには
挑戦心と信頼/自律の関係性は社員だけでなく子供や若者にも当てはまることだと感じ、社員と子供/若者を対比する形で表にまとめました。
社員や子供/若者の挑戦意欲や姿勢というのは、最終的には本人の問題です。
ただ若手社員や子供の挑戦心や主体性の低さを嘆く前に、この表を見ながら経営者や親が持つ影響や、これから出来ることを考えることが大切ではないでしょうか。
日本全体で閉塞感が漂い、努力や挑戦をしても意味がないという社会への不信感。
自分は社会への影響を与えることが出来る存在ではないという、自己肯定感や主体性の低さ。
これらの原因が大人や親など我々側にあることも、忘れてはいけないのです。
我々大人ができることは?
親として、上司として、経営者として、我々にも取り組めることはたくさんあるでしょう。
- 自ら国家や会社に愛着を持ち、自分事として挑戦する姿を見せる
- そしてそれらの行為を自らが楽しみ、子供や若者に共有する
- 子供や若者が挑戦して失敗しても減点主義で評価せず、失敗を振り返り次の成功(成長)に繋げる支援を行う
以前ブログ『過保護が日本を滅ぼす!? ~幸せに向け『人間関係』を見直そう~』でも述べましたが、子供のためを思い先回りして失敗を回避する過保護も、自律や挑戦を阻害する大きな要因になっています。
挑戦を願いながらも実はそれと相反する行動であり、信頼を失っているとも言えるでしょう。
『努力が報われる社会』の実現というと、大きなテーマであり何か漠然としていて、定義することすら難しいと感じられるかもしれません。
なぜなら『報われる』という期待が、人によって異なるからです。
一方で小さな社会の単位である家庭や会社において、『努力が報われる』という実感を生み出すことは可能です。
努力や挑戦の目的、つまり目指す目標やビジョンを共に考え、そこに向けた努力や挑戦の結果を振り返るのです。
帰属する一人一人の成長なくして、会社も国家も成長することはできません。
一人一人の成長には、一人一人の挑戦が欠かせません。
まずは皆さんの周りが挑戦で溢れるように、信頼と自律を育む行動に取り組んでみませんか。