先日教育関係の方とWeb会議後に雑談をしていたのですが、面白い質問を受けました。
<知り合いの発言>
これからの時代に日本人が生き残るために、強みとすべき要素って何でしょう?
多様性や主体性を育まないといけないと言われていますが、、、、
今の日本人がダメだと言われているところに、世界で生き残るヒントがあるように感じています。
その時私の頭に浮かんできたものは、日本人の『情緒(心)』でした。
我々日本人が強化すべき特徴について、考えたいと思います。
目次
日本人の特徴とは?
日本人の特徴を考えるために、西洋人と日本人を比較してみました。
日本人と言っても色々な人がいます。
また西洋と言っても様々な国や文化があるのですが、日本人の特徴を捉える目的で一般的によく言われていることを挙げました。
特徴は強みでもあり弱みでもある
最近の新型コロナに対する対応や、日米開戦に突き進んだ歴史などを見ていると、日本人は物事や将来予測を順序立てて分析し、論理的に判断するのが苦手なのだと感じます。
政治や外交だけでなく企業においても、感情論や経営者の思い付きによる経営判断が行われている場面に遭遇することがあります。
情操中心に考え行動するので、ルールが機能しないような有事において大きな混乱が起きにくいという強みもあります。
大震災下でも秩序正しく行動する日本人の倫理観は、海外からもたびたび賞賛されています。
また日本の組織や社会において個人に求められる姿勢にも、特徴があります。
『以和為貴、無忤為宗(和を以て貴しとなし、さからうことなきを宗となす)』という言葉が、1400年以上も日本には引き継がれています。
わだかまりが残らぬよう皆でよく話し合いなさいという意味で、『和』を大切にしなさいということですね。
限られた国土のなかで田畑を共同して耕したり、長屋で共同生活をする必要があった日本では、組織の一員である個人に『協調』が求められてきました。
ただ最近では相手の考えや状況を無視し、一方的に多数派や年長者に従うことを求める空気が同調圧力となり、尊い個性を抑え込んでしまっている場面も増えています。
個性を抑えると均一化された社会や組織になってしまい、変化に弱くなってしまいます。
日本の特徴が問題を引き起こす原因
戦後日本経済成長の立役者となった当時のベンチャー企業(今では大企業)は、経営者が『直観』で多くの経営判断を下し、世界の競合企業を抜いて大きく成長することができたのだと思います。
当時の経営者は勘や当てずっぽう(直感)で経営判断を下したのではなく、自らの感情や情操(価値観や理念)にもとづく直観により、素早く正しい判断をしていたはずです。
日本人が正しく判断をするためには、直観のもとになる正しい感情や情操が重要です。
調和された強い組織を築き運営していくには、相手の感情を素早く適切に感じ取り、相手に対する細かな心配りをお互い備えていることが前提となっていました。
また外国から評価されている『おもてなし』は、マニュアル化された表面的なサービスとしてのおもてなしではなく、お客一人一人の感情に合わせた心配りからくるおもてなしなのです。
お天道様が見ているという言葉に代表されるように、誰も見ていなくても悪いことをしようとすると心が痛んで自ら思いとどまる。
他人や組織のことを無視して自分の利益ばかりを追求した行動(組織や他人の期待に背く行為)をしようとすると羞恥心が働き、自己をコントロールして利他的な思考に戻る。
日本人の特徴を強みとして生かすことが出来た時代には、日本人特有の『心(情緒)』が育まれていたのだと思います。
その日本人特有の心(情緒)が変化してしまったために、日本人の特徴が弱点になっているのだと思います。
情緒の大切さと教育改革を唱え続けた数学者
日本人の情緒のすばらしさと、戦後教育に対する問題を提起し続けた数学者がいました。
岡潔さんは、日本人の特徴を以下のように表現しています。
日本民族は情の民族である。
人と人の間によく心が通い合うし、人と自然との間にもよく心が通い合う。
この心を情というのである。日本民族は情によってつながっているのである。(中略)人の心をわたし情緒という言葉を使ってます。(中略)
一葉舟 岡潔
人は情緒を形に現わして生きている、その情緒が形に現れるとき、喜びを感じる。
それが生きがいです。
また岡潔さんは半世紀以上前から、情緒が損なわれている原因の一つに(義務)教育を挙げ、教育改革の必要性を訴え続けていました。
義務教育の子に遊ぶひまもないくらいいろんなことを教え込む。
春宵十話 岡潔
その結果、子供たちは、わかってもわからなくてもぼうっとしていることになり、色々なセンスが欠けて正義心、羞恥心も働かなくなるのだ。
半世紀以上前に書かれた文章ですが、受験戦争の早期化や知識(偏差値)偏重の傾向など、その問題は解決されることなく悪化しているのではないでしょうか。
情緒を育てよう
我々日本人が大切にすべき『情緒』を、どの様にして育めばいいのか。
情緒をきれいにするのが何よりも大切で、それには他のこころをよくくむように導き、いろんな美しい話を聞かせ、なつかしさその他の情操を養い、正義や羞恥のセンスを育てる必要がある。
春宵十話 岡潔
岡潔さんは書籍のなかで、自ら受けた教育などの経験を交えながら具体的な内容を述べられています。
一、二、三歳は大自然がもっぱら情緒つまりこころを育てる季節で、四歳では時空を教え、五歳で自他を教え、六歳で集まって遊ぶことその他のおもしろさを教える。
春宵十話 岡潔
情緒に関することだけでなく読書や記憶力、知識など幅広いテーマに関する教育について書かれていますので、子育てをされている方は是非読んでみてください。
また教師がとるべき姿勢などについても書かれていますので、教育に関わられる全ての方に読んでいただきたいです。
日本人として過去を振り返り、失った情緒の大切さを再確認し、次の世代に引き継いでいく。
我々日本人に課せられている責任ではないでしょうか。
『日本/日本人は情緒を通じて、世界中の人と人、人と自然が通じ合うための架け橋を担う』と、
胸を張って言える、そして世界の人びとも、その存在意義を心から認めている。
そんな姿を目指したいなと思っています。