取るべき行動

「知の構造」の変化

日々顕在化している様々な問題の多くは、現代社会のあり方や価値観の矛盾が根底にあると考えています。これらに誠実に向き合うためには、我々一人ひとりの意識や価値観の転換が不可欠であると感じています。

ポストモダン後に全世界で起こっているこの大きな”うねり”は、我々が生きていくうえでの判断基準の大前提の変化でもあり、人間が歴史の中で築いてきた『知の構造』が大きく変化しているものです。そして大前提が変わりつつある状況下で我々は安直に今までの行動を続けるのではなく、しっかりと自らの判断と行動を見つめ直す必要があると考えています。

 

 1.絶対的な価値から相対的な価値へ

「これが正しい」、「世界はこの方向に」と信じられた「XX主義」が揺らいでいます。絶対的な価値はもはや存在しません。グローバリズムにより国家間の相互依存が高まったはずが、ここへきて自国の利益を重視した姿勢が顕著になっています。世界の諸国は分断され、大国の統制力が低下し、国際情勢は極めて不安定です。世界の中心は特定の国家でもなく特定の民族でもありません。資本主義において経済発展で皆が恩恵を受けると言われてきましたが昨今、貧富の格差は拡大するばかりです。合理主義に基づく科学や技術によってもたらされた問題が山積みしています。

 

 2.専門性特化より専門性の統合へ

社会が複雑になり不確実性が増す中で求められる人材も変わっています。決まったことを正確に効率よくこなす人よりも、臨床的に物事へ対処する人が求められています。つまり、専門の仕事しかできない人ではなく、変化に即応でき多様な専門性をまとめ上げ、総合的な地にしていく人が必要なのです。社会は、譜面どおりの内容を指揮者に従い演奏するオーケストラ型から、譜面や編曲(楽曲アレンジ)に囚われずお互いに周りの演奏者と音のリズムに合わせて即興で演奏するジャムセッション型へ変わっています。

 

 3.道具の言語から住処としての言語へ

我々は言語を道具として使い、意思疎通を図ります。しかし言語の研究科の間では、言語は人間の意識・無意識を包含した世界であり、人間はその中に住んでいる、という見方が通説です。ある会社でしか通じない用語を当たり前のように使っていると、会社の言語の中に閉じ込められてしまいます。特定のキーワードに依存すると思考停止を起こしかねません。広大な言葉の世界に浸り、もっと深く考える必要があります。ところがITの発達により機会が生み出す偽の言葉がばらまかれつつあり、私たちの住処は危険な状態に陥りつつあります。

 

 4.自己中心から新たな連帯へ

世界はばらばらになりエゴが噴出、混乱していますが、だからこそ、もう一度、新たな連帯を模索する動きが出てきています。絶対的な何かに従うのではなく、個々人が世界観を持ち、ジャムセッションを通じて関係を築き、新たな価値をつくっていくことが求められます。すべては関係によって規定されるのです。

 

取るべき行動 『健全な迷子になるために』

当たり前だと思っていた大前提が揺らぎ絶対的な価値や拠り所が曖昧になっている今だからこそ、様々な可能性に考えを巡らせることが大切です。

物事を眺め、検討し、見る・考える、まとめる・対話する、それ自体を愉しみながら進む。そうすることで、自らの状況を理解し新しい考えに気づけます。『健全な迷子』の状態です。それは、不確実性が高く変化の激しい社会において、充実した「自分の人生」を歩むために不可欠になるでしょう。

『健全な迷子』となるたに、「自分で考える」・「視野を広げる」・「共有する」・「連帯する」の4つの段階を行ったり来たりしながら進めることが大切です。

 

知の構造変化
(意識/価値観の転換)
  取るべき行動
1.絶対的な価値から相対的な価値へ
絶対的な存在(価値観、大国)の揺らぎによる、社会の不安定化(相対化)
自分で考える
自ら考え何が正しいのかを判断し、自分の評価軸(ものさし)を育てる
2.専門性特化より専門性の統合へ
環境の複雑化などによる、細分化/専門化による効率追及の限界
視野を広げる
様々な情報や考えに触れて視野を広げ、物事を統合して考える習慣を付ける
3.道具の言語から住処としての言語へ
共有された価値観がうすれることにより、積極的な表現による他者への共有が求められる
共有する
自らの考えを、口頭/文書等で他者に向けて発信する
4.自己中心から新たな連帯へ
社会の相対化に伴い、共同体で共有する価値観を一緒に形成する必要性が高まる
連帯する
対話を通して自分の考え(主観)と相手の考えを行き来し、共有できる考え(共同主観)を形成する

※上記表の下線をクリックいただくと、該当するタグが付いたブログ記事を閲覧いただけます

 

自分らしく迷子になる地図(タグ相関図) ibg作成