子供の成長に合わせた大人の関わり ~術→学→観で、自己形成~

前回ブログ『部下との関わり方をアップデートしよう ~状況対応型リーダーシップ(SL理論)~』では、部下との関わり方について考えました。そのなかで子育てにも通じるという話をしたので、今回は子供との関わり方について考えます。子供の成長に応じた教師や親の関わり方について、私が共感している数学者の遠山啓氏の『術・学・観』を紹介しながら、我が家の子育てについて紹介します。

目次

一軒の家を建てるように、子供の成長に関わる

子供が成長するにつれ何を身につけていくのかについて、遠山氏は『術・学・観』という考え方を紹介しています。

幼年期には術、少年期には学、青年期には観に力点をおくようにすべきだと思う。(中略)
私は、術・学・観を構造的にとらえるために、それを一軒の家になぞらえることにしている。土台にあたるのは術であり、土台の上に分立している柱は学、それらすべての上にのっかって、それらを統一している屋根は観に相当する。

競争原理を超えて 遠山啓
術・学・観の構造イメージ 競争原理を超えて(遠山啓)をもとに整理

幼い頃にはまず体を動かし基礎(術)を作り、次に過去の偉人たちにより積み上げられてきた知識や考え方などを知ることで柱(学)を立て、それらをベースに自分自身のことについて考える(観)。

私の場合は、よく外で遊んでいたので『術』は幼少期に形成できていたと思うのですが、『学』は中学受験のための表面的な試験勉強を1年少しでやっただけでその後は身を入れてやっていないので弱く、『観』については大学以降海外で暮らすようになって色々と考えてはいたものの知識がないので独りよがりの価値観に陥っていたように思います。それでも幸い社会人になってから自分の無知に気づき、興味に偏りはあるものの少しずつ『学』を身に着けて、人生観を形成し直している途中です。

術・学・観を習得する成長段階 競争原理を超えて(遠山啓)をもとに整理

 

幼少期(術)において、子供とどう関わるか?

術については、以下のように書かれています。

歩行はここでいう術のひとつだとみなすことができる。子どもの歩行はかれがいつも目撃しているおとなの歩行運動を模倣しながら反復練習することによって体得される術と言える。そして、いちど体得されたこの術は思考をへないで自動的に行うことができるようになる。(中略)「学ぶ」は「まねぶ」であるといわれるように、そこでは、模倣と教え込みが教育の主要な部分を占めざるをえない。

競争原理を超えて 遠山啓

術には、体育や美術、工作、音楽などに加え、国語の暗唱なども含まれていると書かれています。そして美しい文章を反復練習によって暗唱することができると、話したり、文章を書いたりできるようになるそうです。

まさに術を身につける段階である我が家で、当てはまることを考えてみました。

  • 絵本の読み聞かせを赤ちゃんの頃からやっていたので、今でも夜寝る前に読んで欲しいとお願いされます。自分で読めるようになったので、暇があると自分で好きな本を読むようになりました。図書館も大好きで、自分の好きな本を探して読んでいます。ただ最近では、漫画が多くなってきているのが気になっています。
  • 砂遊びも小さい頃からよく一緒にやっていたので、小学生の今でも公園の砂場は大好きです。海辺の砂浜にいけば、丸一日遊んでいます。また私は日曜大工が好きなので、それを真似て余った木材で何か作ったりするのが好きなようです。危険もありますが、基本的なことを伝えたら見守るようにしています。
  • 挨拶や感謝を伝えることも、術に入るのではと感じています。『感謝を伝えること』は大切にしており、子供と一緒にバスに乗ったり買い物に行くと、条件反射的に『ありがとう』が出るようになっています。

幼少期の術を身につける期間は、まさに『親の背を見て子は育つ』が一番強い時期なのだなと改めて思いました。

 

学(少年期)、観(青年期)になるにつれ、距離を保とう

我が家はまだこれからですが、学と観については以下のように書かれていました。

学は、人類の文化遺産の貯蔵庫ともいうべきものであるから、教師による選択・整理を欠くわけにはいかない。その点では自由は制限されるが、一方において生徒自身が貯蔵庫に入り込んでおのれの好む知識を選びだす自由を生徒に与えてやるべきであろう。観は、既に獲得した術や学に基づき、それらを駆使しながら、「この世界は何か」「人生いかに生くべきか」などの大きな展望を自分の責任において形作っていくべきものであり、そこには完全な自由がなければならない。そのさい、教師は背後からそれを援助するだけにとどまるべきである。

競争原理を超えて 遠山啓

小学校で少しずつ勉強が始まると、最初は興味がありながらもよく分からないことも多いので、親が横について教えながら関わっています。上の子は小学校三年生になり科目によって好き嫌いも出てきているのですが、苦手な科目に対しても褒めてあげながら向き合ってもらえるようにサポートしています。SL理論でいうと勉強を始めたての下の子は、D1なので新鮮さがあるうちは考え方を伝えてあげれば取り組んでくれる(S1)。上の子は勉強への飽きも出てきているD2なので、考え方と共に褒めたりしながら取り組んでもらっています(S2)。

観についてはまだ早いですが、まずは『自分は何が好きで、何が嫌いか』ということを考えてもらえればと思っています。子供二人とも本が好きなので、週に一回家族がそれぞれお勧めの本を持ち寄り紹介する会を開催して、好きを意識する機会にしています。その際には、子供たちが話してくれる好きな理由を否定したりせず、また自分のお勧めを押し付けないように注意しています。本は好きですが毎回紹介する本を考えるのは大変なこともありD3あたりなので、継続できるように楽しい雰囲気で盛り上げています(S3)。

 

今回は遠山氏の考えを紹介しながら、我が家の拙い子育てを紹介させていただきました。子育てに正解はないですし、子供一人一人の個性に合わせていくのは難しいと感じています。それでも子供には幸せな自分の人生を送ってもらいたいですし、そういった人が増えてくると社会全体もよくなるはずです。子育てについて、一緒に考えてみませんか。