皆さんは会社の社員や部下に、どのようになって欲しいですか?
また子供がいる人は、どのような大人に育って欲しいですか?
変化の激しい世の中、これまで通りでは上手く立ち回ることが難しくなっています。
社員にも子供にも自律を促したいと考えている人が、増えているのではないでしょうか?
今回はメディアにもよく取り上げられている元麹町中学校校長 工藤勇一先生を取り上げ、自律を育むポイントを探りたいと思います。
目次
麹町中学校のビジョン
工藤先生は2020年3月に麹町中学校を退職されていますが、工藤先生の考えを理解するために麹町中学校の考え方を見てみましょう。
麹町中学校のビジョンにあたる教育目標には、『自律』『尊重』『創造』の3つが掲げられています。

徹底して生徒の自律を支援
麹町中学校では自律について、『自分の力でPDCAを回すこと』と定義しています。
そして生徒の自律を徹底的に考えた結果、定期テストと宿題を廃止されたそうです。
平成30年度から麹町中学校では定期テスト・宿題を全廃しました。理解を確認するための単元テストと本当の実力を測るための実力テストに向けて、自ら計画を立てて学習する環境を支援しています。そのため、日々の授業を通して自分自身で「わかる」「わからない」を判断し、「わからない」を「わかる」に変えるという PDCAサイクルを習慣的に回します。それが、生徒一人一人にとって「個に応じた宿題」にもなるのです。
麹町中学校パンフレットより
テーマや範囲を区切って行う確認テスト(単元テスト)で自らわからない点を明確にし(Check)、不明点を理解するための計画を立て(Action/Plan)、勉強し(Do)、理解できているか再度確認し(Check)、不明点に対して再度計画を立てる(Action/Plan)。
またPDCAを回すために中学へ入学した生徒はまず、1日(24時間)の使い方や週単位、月単位のPDCAを考えられるように、手帳の使い方やノートの取り方などを教わるそうです。
なるほどと感じる考え方やフレームワークが、紹介されていました。
大人でもきちんとスケジュールを管理して自律したPDCAを回せる人は、多くないのではないでしょうか。
自律組織への変革に大切な二つのポイント
生徒の自律を育むために、定期テストや宿題の廃止以外にも多くの改革を進められたそうです。
工藤先生はインタビューのなかで、組織変革において大切な点を2つ挙げていました。
- 参加者全員が当事者になるための仕掛けを考える (トップダウンで組織は変わらない)
- 最上位目標が参加者全員に共感されているか
1は権限委譲であり、自律型組織への変革を目指す経営者や管理職の方も試されたことがあるのではないでしょうか。
ただ2の皆が共感した全ての拠り所になる最上位目標がないと、権限移譲を進めても混乱するだけだとも言われていました。
皆が共感した最上位目標がないと、結局個々人が自分の経験則だけで考えたり、声の大きい人の意見が通るだけになり、皆が本気で変わろうとはならないのです。
手段の目的化を防止
最上位目標とは全ての拠り所となる目的であり、麹町中学校の場合は教育目標(自律・尊重・創造)です。
企業の場合は、企業理念や価値観、ビジョン/パーパスなどが該当するでしょう。
この最上位目標を実現するために、一段一段ブレークダウンしながら具体的な施策(手段)を検討していくのが一般的でしょう。

手段を考える際に気を付けないといけないのが、常に最上位目標を意識することです。
例えば自律を高める(最上位目標)ためには、基礎学力を身につけないといけない(手段)と考えたとします。
そして基礎学力を身につける手段の一つとして、大量の宿題やドリルを繰り返すという施策が挙がります。基礎学力向上と宿題は矛盾しないのですが、大量の宿題を強制すると生徒の自主性が下がるので、本来この手段を取ってはいけないのです。
実際の教育現場では、このような最上位目的と矛盾する施策が大量に残っており、生徒の自律を妨げてしまっているそうです。
このように最上位目標を意識せず、下位の手段を実行することが目的になってしまっている状態のことを、『手段が目的化している』と言います。
あなたの身の回りにも手段が目的化してしまったものが、たくさんあるのではないでしょうか?
- 社員の成長を促すために人事評価を導入したにもかかわらず、評価結果を出すことが目的になり、社員の成長に対するアドバイスや支援がおろそかに・・・
- 子供に音楽の楽しさを感じてもらうためにピアノを始めたのに、気づけばピアノを弾かせることが目的になり、モノでつりながら練習を強要してしまう・・・
自分の組織の最上位目標を再点検
- 皆さんが所属する会社や組織に、最上位目標はありますか?
- あなたはどれくらい理解していますか?
- あなたは心から共感していますか?
- 日常の仕事の中で、どれくらい意識していますか?
疑問や不明点がある場合、トップや上司の方と話してみることを強くお勧めします。
最上位目標を理解できていないと、共感は生まれません。
共感する最上位目標がない状態では、仕事にやり甲斐や意義を見出すことは難しいです。
もしあなたが組織のトップの場合、最上位目標を策定して終わりになっていませんか?
定期的に社員の理解状況や共感状況を把握し、継続的に対話を行うことがトップであるあなたの役割です。
年齢や立場に関わらず、一人一人が心から共感する最上位目標を持ち、自律的に活動できる社会は幸せだと思います。
そんな社会に向け教育が担う役割は、大人に対しても子供に対しても重要です。