ルヴァンカップ決勝 
~サッカー観戦を通して考えたこと~

先週末に国立競技場で実施されたルヴァンカップ決勝を、家族で観戦してきました。観戦チケットの抽選に当たったので、東京オリンピックでは叶わなかった国立競技場観戦も含め、行くことにしました。

今回は少しゆるくサッカー観戦を通して感じたことを、6つの視点を使って書いてみたいと思います。

 

目次

自然を意識した新国立競技場(人間と自然)

東京オリンピックが無観客になり入れなかった新国立競技場に入れるということで、事前に少し調べてから行くことにしました。デザインは費用問題などもあり、最終的には隈研吾さんが担当されました。デザインのコンセプトに自然との融合も含まれており、実際に訪れてみると居心地がいいように感じました。

競技場などの建築物は無機質な印象が強いのですが、屋根は鉄骨と木材のハイブリットになっており、温もりを感じました。軒庇(のきびさし)には47都道府県の杉を各地の方角を向くように配置しています。また風を取り組む構造を考え、夏も冬も居心地がいいように工夫されているとのことでした。

上部に見えるのが、鉄骨と木材のハイブリットで作られた天井
右側に広がるピンク色は、客席を埋め尽くすセレッソ大阪のファン
鉄骨と木材のハイブリット天井のアップ

人間が自分たちのために建造物を建てるということは、どれだけ配慮しても環境への負荷は生じます。その前提を理解しながら自然を最大限活かす形で、如何に人が居心地良く過ごせる空間をデザインするか。またその建物の周辺に対する影響(外観含め)も、考慮することが求められているのだと思いました。このような意識が一般にも広がっているからこそ、自然との調和が意識されたデザインが好まれるようになっているのでしょう。

 

子供の質問から考えた『君が代』(文明と文化)

競技場に入って周りを観察していると、選手たちが入場してきました。そして試合の前に、国家独奏がありました。国際試合であれば国歌により、お互いの国家を謳い、国の代表が戦うという意識を選手も観客も高める風景はよく見ます。ただ今回は国内戦なので、少し驚きもありました。ネットで調べてみると、プロ野球のシーズン戦でも連戦の最初には国歌独奏が一般的なようですね。

国歌独奏のため観客も全員が起立するように、アナウンスがありました。そこで娘から、『なぜ歌を聞くのに皆立たないといけないの?』と素朴な質問を投げかけられました。その場では手短に、『自分たちの国の歌だから、大切に聞くためかな。それに選手たちに頑張ってもらうために、応援の気持ちを伝えるためでもあるんじゃないかな?』と返しました。ただ少し気になり、後からネットで調べてみると『君が代問題』というなかなか深いテーマの話題がたくさん見つかりました。

君が代の意味(『君』が誰を指すのか?誰のための歌なのか?)や歴史背景などは、ネットで沢山みつかるのでここでは触れません。色々な捉え方や考え方があるのは大切なのですが、自分たちの国や土地、文化や歴史を意識する機会を子供の頃から持つことは意味のあることだと個人的には思っています。押しつけにならないように気を付けながらも、子供たちにも色々と投げかけたいなと思いました。

また試合前には、前日に病気で亡くなられた工藤壮人選手への黙祷が捧げられました。黙祷に対しても、娘から質問を受けました。たまたま幼稚園がキリスト教だったので、お祈りは身近に感じており理解出来たようでした。試合開始までにも、色々と学びの機会がたくさんありました。

 

選手とファンが一体になり、最後まで(個と公共)

本題試合ですが、後半ロスタイムまでは1-0でセレッソ大阪が勝っていたのでが、ロスタイムでサンフレッチェ広島が2点入れての劇的な逆転劇でした。まさに試合は最後までわからないということを、身をもって感じることができる試合展開でした。最後まであきらめずに勝ちにこだわる選手の姿から、子供たちも何かしら感じてもらえていたらいいなと思いました。

試合が終わるまであきらめなかったのは、選手だけでなくサポーターも一緒でした。試合開始前から終了までずっとエールや歌を歌ったり、手拍子をしたりしていました。その間ずっと立ちっぱなしで応援する様子は、選手と一緒に戦っているんだなと感じました。スポーツ観戦になじみのない私にとっては、サポーターの熱量も驚きの一つでした。

ロスタイムまでリードしていたセレッソ大阪のサポーター陣は、逆転負けが決まって意気消沈の雰囲気が漂っていました。それでも試合後に選手が挨拶に来ると、温かい感謝の言葉をかけているのが印象的でした。スポーツは勝ち負けが明確に出るという厳しさがあるからこそ、次こそは絶対に勝つために更に練習に励むという姿勢を改めて確認しました。

 

不正は見逃さない、VARの力(デジタル)

スポーツにおいて、審判が下す判定は絶対です。そんな絶対的な力を持つ審判ですが、人が行うことなので間違いもあります。そこで誤審を回避して公平な試合運営をテクノロジーの力で行おうとする試みの一つにVAR(ビデオアシスタントレフリー、ビデオ判定)があります。サッカーでは2018年のロシアワールドカップから、導入されたそうです。サッカー以外にも、テニスやバレーボール、野球など様々なスポーツで導入されています。

今回の試合では、VARにより試合の流れが大きく変わりました。まず後半34分に相手選手の顔を殴ったとして、セレッソ大阪の選手が退場になりました。当初審判はイエローカードを出していましたが、VARの結果レッドカードに変わりました。

また後半ロスタイムには、数的有利になったサンフレッチェ広島が攻め入り、ゴール前で相手選手の反則(ハンド)によりPK(ペナルティーキック)を得て同点にしました。この反則も、VARの結果でした。そして息を吹き返したサンフレッチェ広島は、再度攻め入り逆転のゴールを決めて勝利を得ました。

VAR導入により試合が中断したり遅くなったり、また審判の見えないところでの駆け引きもテクニックの一つなど、色々と否定的な意見もあります。確かに試合にスピード感が欠けるのは惜しい気もしますが、正々堂々と戦ったうえで勝ちにこだわるというスポーツマンシップは一番守るべきものだと思いました。特に子供たちに夢を与え手本となるプロ選手たちには、そうあってもらいたいですね。